花壇の花静かに溶けて (ページ3)

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楓の過去ページ3

ー今回は楓の過去についてです！ー

俺は、小さい頃、浄川(きよめがわ)の下流で見つかった。

俺は孤児院に連れてこられた。
孤児院といっても、環境は最悪であった。

小さな小屋で、不味いメシをみんなで分け合って暮らした。
中には精神が崩壊して、隠れて子供を食っていたやつもいた。

村の奴は、俺らの世話をする気なんてない。
それどころか、早く死んで欲しいとまで思っていたのだろう。

そんな俺の人生は、ある日を境に激変した。

俺は、小屋の入り口近くに花が咲いているのを見つけた。

他の奴に見つかる前に食べよう。見つかれば全部取られてしまう。

俺は何の躊躇いも無く花を食った。

その刹那
世界が反転した。

気づくと、高価そうな絹の布団の上で目覚めた。

医者は言った。

「貴方は夢花病にかかっています。おめでとうございます。貴方は15才まで生きる権利と、神としての権力が授けられたのです！」

俺には理解できなかった。

後から知ったのだが、夢花病とは、15才までしか生きられなくなり、その代わりに特殊な能力…魔法というらしい…が使えるようになるものらしい。

どうやら、この村に古代から自生する「アカツヌギの花」の花粉が肺に入ると、ごくごく稀に発症するらしい。

そしてこの病にかかったものは、神の使い…天使だと信じられている。

それから、嘘のような豪華な生活が始まった。

服は絹で出来ていて、手触りが最高のもの、教育は村の秀才と、朝の一族しか通えない名門校、家は、何と上にいくつも重なったような造り…5階建というらしい…や、極め付けは血の繋がってないにせよ、家族まで与えられた。

しかし、その中のどれよりも豪華だったもの
それは

墓だった

墓にはその中で生活できるのではないかという程の地下通路が作られていて、墓の周りには色とりどりの花。

地下通路の中心には、無数の飾り気のない小さな棺桶と、1つの花を象った彫刻が施された棺桶。

予定では、俺が死んだら彫刻入りの棺桶に俺、小さな棺桶に他の生贄が入れられるらしい。

俺は死ねない。まだ。
昔は、あの地獄のような小屋から出られるなら、寿命なんてどうでも良いと思っていた。
でも、今は違う。

まだ死にたくない。生きていたい。

わがままだと思うだろう。恩知らずだと呆れるだろう

それでいい。

人間なんてそんなもんさ。
どんなに恵まれても決して満たされることはない。

俺は人間なんだ。