復讐のレクイエム

エスカレートするイジメ前編 ページ4

この日美桜乃はいつもより苛立っているように見えた。

教室に入ってくるなり、美桜乃は私の机を蹴りあげた。

「うぜぇんだよ！！」

金切り声をあげる美桜乃を唖然と見上げる。

「あんたの顔見るとイラつくんだよ！あーーもう。学校にくんな！！」

美桜乃は私の髪を掴むと、勢い良く引っ張りあげた。

ブチブチっとなん本か抜けた、嫌な音がした。

そして美桜乃がポケットから瓶の用な物を取り出すと、私の頭に降り注いだ。

ポタポタと滴が髪から落ちる。

やめて…お願い。

イジメは徐々にエスカレートする。

今日は主犯の美桜乃の機嫌が明らかに悪い。

愛が鼻をつまみながら顔の前で手をブンブンと降る。

「何か 凄いニオイするよね…」

「気持ち悪くて吐きそう」

クラスじゅうの至るところでコソコソと喋る声が聞こえる。

それを見ていた四人組は顔を見合わせてほくそえんでいた。

廊下の水道で髪を水洗いしてタオルで髪を拭く。

夏でよかった。

冬だったら地獄だっただろう。

少しはましになったよね…？

「あーーマジ、くせぇな。汚物はゴミ箱に行けよ」

教室に入るやいなや荒杉 しおんが私に対して暴言をはく。

毎日教室に入るのが怖くて。

寝る前に「明日よりはましでありますように…」って祈って。

親には「楽しかったよ」っと嘘をつく。

誰も助けてくれない

声すらかけてくれない

誰も、誰も、誰も、誰も…。

完全に沈み切っていたその時だった。

ガラァ 教室に入ってきた担任。

「ちょ！？何の匂い！？一体誰なの！？」

キョロキョロと辺りを見回す担任に「野村さんでーす」っと声をあげるシズカ。

担任はツカツカと歩み寄ってきた。

「貴女！その匂いなんとか出来ないの！？物凄く酷いわよ！！」

「…ごめんなさい」

「それで、今日は香水をつけてきたの？」

「っ…それは…」

キュッと唇を噛み締めると先生を見上げる。

先生は一瞬目を細めて私の髪に視線を向けた。

夏とはいえ髪がびしょ濡れは可笑しい。

香水の匂いも異常だ。誰かにやられたりなんてことも考えられる。

私から言えば「担任にチクった」として更に酷くなる。

きっと先生なら気づいてくれる…。

けれどそんな思いはすぐに裏切られた。

「先生」

美桜乃が横やりを差した。

「私達、野村さんには困ってるんです。香水で教室を変な匂いにして…。うちのお父さんに言ったらどうなるかなぁ…」

「あっ、えっ！？話は後にしましょう！HRを始めます！」

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