お仕事中 ページ5
ﾋﾟﾘﾘﾘﾘﾘﾘﾘ
夜久さんの顔を見ていると、夜久さんのポケットから着心音が響く。
「もしもし。俺やけど。」
夜久さんの声のトーンがひとつ、下がった。なんというか、威圧感、そんなかんじの雰囲気を感じた。
「天音君。夜久今な、多分仕事の電話やから、静かにしとこうな」
日塚さんが口元にひとさし指を立てて、にっこりと笑う。なんだか、日塚さんからもなんともいえない雰囲気を感じた。
俺は素直に頷く。
「あぁ。そいつらはバラしてええよ。もう用ないやろ」
ふと夜久さんの声が耳をつきぬける。
「バｯｯｯｯ?!?!?!」
声をあげると、日塚さんに口を塞がれる。
バラすって何？秘密をばらすとかのニュアンスじゃなかったきがする。つまり、それって、夜久さんは…………。
日塚さんと目があう。
俺、死んだかも。
「おう、ほんならよろしゅう」
ピッと電話を切る音とともに、夜久さんの視線が俺にむく。
いつもなら、綺麗で目がはなせなくなるような目なのだが、今は違う。冷たく細いゾッとするような目をむけられていて、ある意味目が離せない。
「天音君…？」
はっとした。夜久さんはいつもの夜久さんに戻っていた。さっきのはなんだったんだろう。
「あ、そのすみません。あはは」
頭をかいて笑ってみせるが、じっとりと嫌な汗をかいていた。気をぬいたら倒れそうだ。
「天音君………もしかして……………………………やっぱなんもないわ。俺、ちょい用があるで、帰るわ。またね」
夜久さんはいつも通りの笑顔を見せて、俺たちに背をむけていってしまった。
「ひ、日塚さん。」
ずっと近くにいた日塚さんに視線を送る。すると、日塚さんはにんまりと笑った。
「天音君、すっごい顔色悪いで？」
「ひ、日塚さん、は、夜久さんの、仕事。知ってるんですか………？」
もしかしたら、日塚さんもソレなのかもしれない。だとしたらすぐにここから逃げたい。
「知ってるで。天音君、知りたいん？」
仲良くさせてもらっていたし、知りたい。俺はゆっくり頷く。
「夜久の仕事はな………」
日塚さんはますます口角をあげる。
「薬剤師や。」
「………………………は？」
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作者名：久我 羊 | 作成日時：2020年8月28日 22時
