『大好きだった人』2 ページ12
．
私には今、彼氏がいる。
恋愛って、幸せで、あったかくて満たされるものだって思える、そんな人。
洸人といた時みたいに、振り回されたりしない。
ちゃんと言葉にして伝えてくれて、私を大事にしてくれる人。
柾哉くん。
会社の先輩で、しっかりしてて、皆の憧れで、びっくりするくらい出来た人。
本当に素敵な人。
もう、あの頃みたいに泣いて洸人に縋る私じゃない。
「新しく入ってきた人、知り合いなんだってね。」
仕事終わり、私の家に来た柾哉くんがふと、そんな話題を持ち出した。
まさかの話題に、コーヒーを混ぜていた手が固まる。
『…ああ…ただの、同級生だよ。』
洸人がそんな風に言ったことを思い出して、咄嗟に同じように言った。
「ほんと？」
『うん、ほんと。はいどうぞ。』
2つのマグカップはお揃いで買った。
可愛い赤色のマグカップ。
動揺を隠すように、すぐにコーヒーに口をつけると、舌を火傷した。
しかし、柾哉くんはマグカップを両手で持ったままで、口に付けようとしない。
『どうしたの？』
「ただの同級生、下の名前で呼ぶ？」
『……え、なんで』
少し低い声の柾哉くんは、不機嫌をチラつかせていた。
「川田さんから聞いた。結構親しいみたいって。」
川田さん……。
あの時、洸人に話しかけてた人だ。
余計なこと言われた。
一気に冷や汗が出て、鼓動が早くなるのを感じる。
『高校時代、結構クラスで仲良かったんだよね、それでだよ。
ほんとにそんな親しくないから、全然。皆そんな感じ…。』
私って、嘘つくの得意だっけ。
必死に口を動かす中、そんなことを考えた。
あまりついたことはない、得意かどうかは知らない。
でも、不安そうな柾哉くんに元カレですなんて、言えなかった。
「嘘じゃない？」
『うん、…ほんと！』
「わかった」
そう納得する柾哉くんに、胸を撫で下ろした。
初めての嘘だった。
2人の間に隠し事なんてなかった。
たった一つの大きな隠し事。
この幸せを崩したくない。
尊くて、あたたかくて、満たされるこの関係を。
ただそれだけ。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 307人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やなぎ茶(プロフ) - ayuさん» 本当ですか〜❣️嬉しくてあったかいお言葉ありがとうございます😭がんばります！ (11月13日 22時) (
レス) id: 5b37ec5afa (このIDを非表示/違反報告)
ayu - やなぎ茶さん» なるほど😮💡了解です👍🏻 ̖́-︎亡霊、拝見させていただいています!やなぎ茶様のペースで更新頑張ってください🥹💖 (11月13日 7時) (レス) id: 9a7e8648d6 (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ茶(プロフ) - する予定ですので、その時ご機会あればよろしくお願いします☺️ (11月13日 1時) (レス) id: 5b37ec5afa (このIDを非表示/違反報告)
やなぎ茶(プロフ) - ayuさん» ayu様コメントありがとうございます❣️そちらですが、続編のお話が長編化したもの（亡霊）と、途中まで書いたものがありまして、中途半端なのと年内更新予定がないため現在は非公開にしております💦 また年明けには公開して更新 (11月13日 1時) (レス) id: 5b37ec5afa (このIDを非表示/違反報告)
ayu - コメント失礼致します🙇♀️この作品の続きが気になるのですが、パスワードはどうすれば教えていただけるのでしょうか…？どこかに書いてあるのなら確認不足です;ᯅ;すみません、！ (11月12日 20時) (レス) @page46 id: 9a7e8648d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やなぎ茶 | 作成日時：2023年3月27日 18時
