甘くふかく ページ10
「ねえジミン」
眠そうに目を擦りながら僕の名前を口にした彼女は、僕が返事をするよりも先に本題を切り出した。
「私たちってさあ、セフれ？」
唐突すぎるその質問に僕は思わず吹き出してしまう。それが心外だったのか、Aは一瞬して顔を歪ませた。だって、真顔でとんでもないこと聞くもんだから、そりゃあ吹き出すって。
「どうしたの、急に」
笑いを含みながら質問で返せば、さらに不愉快そうな顔をした彼女。
「響き、悪いなあって」
「今更でしょ、そんなもん」
会えばどちらからともなく誘って交わる、そんな体だけの関係になったのはつい最近のことではないというのに。何を気にしているのか、そういう関係になってからある程度彼女のことをわかった気になっているけれど、たまにこういう、ワッと驚くことを言うのが彼女らしい。
「今更って、じゃあジミンはそう思ってたってこと？」
「というか、いちいち確認するもんでもないでしょってこと」
「・・・ふーん」
あきらかに納得の行っていない彼女が面白くて、口元に自然と笑みが浮かんだ僕は彼女の肩をゆっくりと押してベッドに沈む。少し驚いて目を丸くしているのが可愛い。
「Aは」
彼女の上にまたがりながら「ただの友達とこういうことするの？」と笑えば、目を逸らせれる。逃してたくなくて顎を優しく掴んでこっちを向かせれば心底嫌そうにされる。
「恋人同士じゃないとこういうことしないでしょ」
眉間に皺を寄せた彼女がそういうので、柔らかくて心地よい唇に指先で触れてやれば彼女の警戒心が強まった。
「そうだね」
僕の返答に言いたいことがありそうな彼女の口を今度は自分の唇で塞ぐ。
少し顎を引いて逃げようとした彼女の唇を追いかけるように接吻して、触れたり離れたりを繰り返すと、唇が離れた隙に「じみん」と彼女の口が動く。
彼女の目を見つめれば、キスで少し蕩け始めた目がまっすぐ僕を見つめた。
「彼女にして」
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作者名：J | 作成日時：2022年6月16日 20時
