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私には好きな人がいる。
好きな人からの言葉が欲しい。気持ちが欲しい。体が欲しい。全部欲しい。
しかし残酷だ。人間関係は、恋愛なら尚更、ギブアンドテイクではない。
私の心を奪う人は私の体を奪ってくれないし、体を奪ってくれる人は心はいらないらしい。
だから私は、心を満たしてくれる人と身体を満たしてくれる人は別でいいと思っている。
一人だけを愛すなんて不可能なんだよ。私の部分部分を愛してくれる人がそれぞれいれば、私全部が愛されているのと同じことでしょ。
私が饒舌にそれを語れば、目の前の男は不快感を顕にした。
「おまえってバカなんだな」
「酷いなあ」
「大事にしろよ、心も体も」
「してるってば」
してる結果が、これなんだから。
「そんなに言うなら、先生が私の心も身体も大切にしてよ」
「無理」
本当に酷い男だと思う。ミンユンギという男は。
私がこんな考えになったのも、全部先生のせいだというのに。先生が、私の身体を満たしてくれないから、ほかの人に縋っているというのに。
「じゃあ放っといて。」
私の言葉にさらに眉間の皺を濃くした先生は「おまえ」と口を開いた。「また学校でヤっただろ」呆れた言い方だった。
「だって」
「へえ、否定しないんだ」
チッ、と小さく舌打ちして「アイツもアイツだ」と私から視線を外した。
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「なむじゅんセンセー…」
「んー?」
先生の膝のうえでダラける私にお構いなしに、先生は読書を続ける。
清潔感のある柔らかいシーツに沈みながら先生の硬い膝枕を堪能した。
「ユンギ先生に学校でしたのバレちゃった」
「また?ヒョンは鋭いね」
「なんでわかるのかな」
私の言葉に先生はやっと本を読むのをやめて、私と目を合わせた。
「匂いじゃないかなあ」
「匂い?」
「した後のAからは、甘い香りがする」
ええ、そんな馬鹿な。
怪訝な顔をした私に先生はえくぼを浮かべて目を細めた。
「試してみる?」
大人のあそび、してみようよ。と、誘惑されている気がした。そんなことを生徒にいうナムジュン先生はかなり歪んでる。これに頷く私も私だ。
私は自ら、先生の都合のいい相手になりたがっているんだから。ユンギ先生とは違って、とてつもない冷たさを感じさせるナムジュン先生は、私の身体を甘い水でたっぷり満たしてくれる。
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作者名:J | 作成日時:2022年6月16日 20時