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「ソアちゃん、僕と付き合いませんか?」

は?と、口について出るところだったのを寸前で引っ込めて飲み込んだ。

何を言っているんだ、この男は。
私は目を見開いて、憎たらしいほど整った男の顔を見つめた。

「だめ?彼氏いるんだっけ」

首をコテっと傾げた男、キムソクジン。私は今の状況をなるべく早く脳で処理して理解しようと試みる。

「なんで、私?」

私もコテっと首を傾げて問えば、ソクジンは困ったように笑った。

「なんでって、うーん、付き合いたいからだよ、普通に」

付き合いたい?キムソクジンが、私と?
いや、おかしい。ソクジンが付き合いたいのは私ではないはずだ。だってソクジンと私の大好きな親友コ・Aは両思いのはずで。私は近い将来訪れるであろう失恋に心の準備を整えていたところだった。

明らかに両思いである二人をすぐそばで見守り、できるだけこの男をAから遠ざけていた、私の努力が報われたのだろうか。
私が欲しいのはAからの好意であってソクジンからの好意ではないので報われたとは言えないけれど。ソクジンとAが見事結ばれる結末は見なくて済むようになったのだ。

私はできるだけいい笑顔で目の前の憎い男に「彼氏いなよ、いいよ」と返事をした。

私はAに『ソクジンくんと付き合うことになった』そんなメッセージを送った。




はじめてのデート。本当はAと観たかった映画をソクジンとみて、カフェで珈琲をのんだ。

「僕、Aに恨まれないかな」

「なんで?」

ストローをイジりながらそんなことを呟いたソクジンに首を傾げる。そんな私を見て目を細めたソクジンは「だってAって、君のことが好きでしょ」と笑った。

「君に彼氏がいるのか聞いたらいるって言ってたんだ。それって僕に君を取られたくなかったからでしょ」

少し寂しそうに言葉を並べたソクジンに、私はやっと、状況をすべて把握したのだ。
あはは、なるほど。うん、なるほどね。そうか、私が敵わないと思っていた男は、私に敵わないと思ったのね。

腹を抱えて笑いたくなるのを堪えて「私たち、お互いの事が大好きだからね」と微笑む。

こういうのって、男より女のほうが何倍も鋭いんだよ、キムソクジン。

私は「あなたとんだ勘違いをしているよ」とは教えてやらなかった。
私の言葉に傷ついた顔をした大嫌いなこの男を、私は満足気に見つめるのだった。

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作者名:J | 作成日時:2022年6月16日 20時

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