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No ページ3

キムソクジンに親友のあの子の名前を聞かれた。


少し緊張した様子で私の言葉を待つソクジンに、嫌な予感と醜い感情が私の中に生まれた。もしかして、ソクジンの好きな人って___。どうか、私の勘違いであってくれ。

動揺を悟られないように注意しながら親友の名前を口にすれば、同時に酷い後悔と、嫉妬に支配された。ソクジンは切なげに、確かめるように親友の名前を繰り返した。

そんなソクジンに心が痛んで「なんで?」とは聞けなかった。聞くのが怖かった。
「用事がある」とかの、単純な答えが返ってくるとは思えなかったのだ。



次の日、ソクジンからこんなメッセージが届いた。

『ソアちゃんって彼氏いるのかな』

ソアとは私の親友の名前。キムソクジンが昨日、声に出して呼んだ名前。

『いるよ』とだけ私は返信して、ベッドに顔を埋めた。
真っ赤な嘘だった。なんでこんなすぐバレる嘘、ついたんだろうか。罪悪感と自己嫌悪の念が私を襲って、その日の睡眠時間を奪った。『そっか』そんなソクジンからのメッセージは見ていないフリをした。



『ソクジンくんと付き合うことになった』


そんなメッセージがソアから届いたのは、意外と、いや予想通り、はやかった。




ぼくが大好きなあの子には、好きな子がいる。僕は大好きなあの子の親友に嫉妬している、酷いくらい。

僕が大好きな君から、君の大好きなあの子を奪えば僕を見てくれるだろうか。嫉妬でも、恨みでも。どんな感情でもいい、君からの感情が欲しい。我ながら醜いな、そう思った。


「あの子、なんて名前?」


それでも僕は止まれなかった。そうせずにはいられなかった。
僕の質問に少しだけ目を丸めて、一瞬、動揺の色をみせた。

ほら、やっぱり。取り繕うのがいくらうまい君でも、不意打ちは無理でしょ。

ゆっくりと口を開いたこの子は「…ソア」と、小さく呟いた。少し低い、心地よい声。

「ソア」

僕は繰り返してその名前を呼んだ。僕の嫌いな女の子はそういう名前なのか。僕からこの子を取っていく酷い子は、ソアっていうんだ。僕の好きな低い声で何度もそう呼ばれているのか。

眉間に皺が寄り添うになるのを抑えて取り繕った。
僕を疑惑の目でみつめるこの子に「ねえ、そんなにあの子が好きなの?」と、問い詰めたかった。叶わない恋だよねって、傷つけてやりたかった。

あーあ、最ッ低な男だな、僕って。

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作者名:J | 作成日時:2022年6月16日 20時

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