Americano ページ1
アメリカーノを飲んだ。苦く、冷たい感覚が舌に広がった。私たちの関係は、アメリカーノの様だと思う。
きっとお互い、軽蔑して、心の中で侮辱しあっている。
あまりにも苦い、長い夜の味を少しでも薄めるために、甘い嘘を囁き合って、奪って、奪われて。
いいよ、軽蔑してくれて。
だってわたしはアメリカーノが大好きだから。
.
「ジミン、香水なに使ってる?」
私の膝の上で赤ちゃんみたいに眠そうにしている男の髪に顔を近づけた。ふわふわした柔らかい黒髪がテーブルランプで照らされて艶めいている。
「なんもつけてない」
「え」
思わず目を丸めた。
私の驚いた声に瞑っていた目をゆっくり開いたジミンは、私を見上げて「香水つけてきたことないよ」と笑った。
嘘だ。そう思った。
彼はいつも甘い匂いがする。それは洗剤とか柔軟剤とか、そういった匂いとは違う気がする。もっと誘惑的で危険で、欲が掻き立てられるようなズルい匂い。
「ふふ、なんで?いい匂いした?」
「…うん。でも嘘でしょ、だって、洗剤の匂いじゃない」
「ほんとだってば。僕、そんなお洒落な男じゃないもん」
ジミンの柔らかい手が私の頬に触れた。「僕、いい匂いするのかあ」そう呟いて、ゆっくりと私の唇をなぞり始める。「ふーん」と、そんなことを言いながら私の唇を焦らすように見つめる、あまりにも危険な視線。
「いい匂いだと思うひとは、遺伝子的に相性がいいらしいよ。」
ジミンはそう言って口元を緩く吊り上がらせば、「しよっか」と、目を細めた。
苦くて甘い夜のはじまり。飲みかけのアメリカーノは、氷で薄まっているはずだ。
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作者名:J | 作成日時:2022年6月16日 20時