検索窓
今日:12 hit、昨日:0 hit、合計:12,149 hit

Americano ページ1

アメリカーノを飲んだ。苦く、冷たい感覚が舌に広がった。私たちの関係は、アメリカーノの様だと思う。

きっとお互い、軽蔑して、心の中で侮辱しあっている。
あまりにも苦い、長い夜の味を少しでも薄めるために、甘い嘘を囁き合って、奪って、奪われて。

いいよ、軽蔑してくれて。
だってわたしはアメリカーノが大好きだから。


.

「ジミン、香水なに使ってる?」

私の膝の上で赤ちゃんみたいに眠そうにしている男の髪に顔を近づけた。ふわふわした柔らかい黒髪がテーブルランプで照らされて艶めいている。

「なんもつけてない」

「え」

思わず目を丸めた。
私の驚いた声に瞑っていた目をゆっくり開いたジミンは、私を見上げて「香水つけてきたことないよ」と笑った。

嘘だ。そう思った。
彼はいつも甘い匂いがする。それは洗剤とか柔軟剤とか、そういった匂いとは違う気がする。もっと誘惑的で危険で、欲が掻き立てられるようなズルい匂い。


「ふふ、なんで?いい匂いした?」

「…うん。でも嘘でしょ、だって、洗剤の匂いじゃない」

「ほんとだってば。僕、そんなお洒落な男じゃないもん」


ジミンの柔らかい手が私の頬に触れた。「僕、いい匂いするのかあ」そう呟いて、ゆっくりと私の唇をなぞり始める。「ふーん」と、そんなことを言いながら私の唇を焦らすように見つめる、あまりにも危険な視線。

「いい匂いだと思うひとは、遺伝子的に相性がいいらしいよ。」

ジミンはそう言って口元を緩く吊り上がらせば、「しよっか」と、目を細めた。


苦くて甘い夜のはじまり。飲みかけのアメリカーノは、氷で薄まっているはずだ。

.→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
183人がお気に入り
設定タグ:BTS , JK , JM
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:J | 作成日時:2022年6月16日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。