秋の魔女

♢ ページ5

立花の話を要約すると、こうだった。


黒木は、夏あたりから急に元気がなくなり、無理に笑うようになったらしい。


心配していろいろ尋ねても、うまくかわされてしまうとか。


一ヶ月以上その状態が続き、流石にただ心配しているわけにはいかなくなった立花は、大学が同じ俺なら、何か知っているかもしれないと考え、俺に電話をかけてきたらしい。


顔は見えなかったが、ぽつりぽつりと話す立花は、明らかに動揺しているようだった。


俺は、どうすればいいのだろう。どうすれば、2人を上手く支えられるだろうか。


彼女を困らせるなと黒木に言ってやりたいし、黒木のことで立花が電話をかけてきたことに、何も感じていない訳ではないが、黒木なら、いくら余裕がないとは言えど、立花が自分のことを心配していることぐらいは気づいているだろう。


いきなりダイレクトに切り込むのはマズいだろうと判断し、他の切り口を探す。


必死に黒木の状況を説明する立花の話を聞いて、思わず協力すると言ってしまった。


別に協力をしたくなかった訳ではないが、このことばかりは簡単に務まることではない。それでもやはり、自分は、少しでも立花と黒木の力になりたかったのだ。


ふと、今日の昼間の黒木を思い出した。


何かを抱え込んでいる様子だったことも。


やはりあれは気のせいではなかったのだ。


はやく手を打たないと、手遅れになる。


そんな気がした。

紅の彼岸花→←♢

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す