1話 ページ3
「…………夢か」
目が覚めると見慣れない天井があった。
起き上がって辺りを見渡す。宿に泊まったんだった。
「…………随分懐かしい夢を見た」
もう何年も前のことなのに、つい昨日のことのように思い出せるのだ。あの時は幸せだった、と。
あれから何年経っただろう。
「……」
ひとりぼっちの私。数年前、【アレ】があってから、私はひとりぼっち。
アレのせいでお母さんも、お父さんも。
行くあてもない。ひとりフラフラと果てしない道を歩く。
アレは、私が9歳のとき、起きたんだ。
戦争だ。
何カ国かを巻き込んだ大規模な戦争。
黒い鉛玉や熱い炎が飛び交うおぞましい光景。
人々の血が飛ぶ。また飛ぶ。
出来ればもう、見たくない。
昔話はこれくらいにして。
この世界には沢山の国がある。その国のひとつに、辿り着くまで、どれくらい掛かるのか分からないけど、それでもいい。
いつかまた彼に会えると信じて。どこかの国にいるはずの彼を探すために。
それが今の私の生きる理由なのだ。
それだけが、わたしの、
宿から出て、重い足を上げて、歩き出した。
私の今いる国も戦争の跡地。
まだ生え変わっていない柔らかな芝生を踏んだ。花なんて、ひとつも生えてないし。
言ってしまえば殺風景。何も無い。
そんな場所だった。
次は、
【限界国】だっけか、________
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泡名井(プロフ) - いいすね...タイプの小説です。気長に待ってます。ファイお〜 (2023年1月31日 20時) (レス) @page5 id: e7ab028975 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒飴 | 作成日時:2023年1月30日 12時