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「場地くんと帰りたかったよね。ごめん」









一緒に帰る事の多い話を
聞いたことのあるAは謝罪を口にする。


千冬は"まぁいいけど"なんて言うが、
実際の所 あまり気にはしていない。


場地と帰れなかった事を
完全に気にしていないわけではないが、

今日はAを優先しろと
笑みを浮かべた場地から言われていたりしていた。









「でもね、せっかくだからって思っちゃって」




「は……?」




「ちょっと付き合ってよ、千冬」









何を?と思った千冬に
Aは企むようにニッと笑顔を浮かべた。









 














 




もうどれくらいの時間が経ったのか。


千冬はニコニコと笑顔で楽しそうに歩く
Aの背中をひたすら追っていた。









「……なァ、まだ?」




「うーん……もう少し」




「何度見たって変わらねぇだろ。
悩むんならそれ全部買えよ」




「…千冬のわからずや。流石男子」




「流石って…褒めてねぇだろ」









ピンク色の雑貨屋。
男がいては若干浮いてしまう店内の、
アクセサリーコーナーの一角にAは立っている。


ヘアピンやヘアゴムが並ぶ棚。
そこで真剣に吟味しているAの背中に
千冬は声をかけた。




この店に来るまで、
いくつかの店に千冬は付き合わされていた。

もちろん、
今ここで見ているアクセサリー系以外にも
本来 女同士で一緒に行くような店を
Aは千冬と回っていた。









「…こういう店は普通女友達と来るだろ。
オレじゃねーだろ、絶対ェ…オマエ、友達いねぇの?」




「なっ!失礼な!私だって友達いるよ!!
………多くはないかもしれないけどさ」









聞き捨てならんという勢いで
千冬の方を振り返ると
口を尖らせながら、再び棚の方へと顔を戻した









「(…まあ、別にオレも多いわけじゃねぇけど)」









多くいたって面倒なだけ。


Aに言った言葉は若干
千冬自身の心にも何かが刺さった。









「皆 ほとんど部活に入ってるから…
放課後付き合える子はいないの」









…部活。


Aが大抵の学生が入る部活に
入っていない理由を千冬は直接聞いた事はない


けれど、想像はつく。


女子だけの部活は大体 運動部。
運動系が不得意なAが選ぶ事はまずない。

それ以外の部活と言ったら男女混合。

………男が苦手なAには多分無理。









「だから、折角 千冬が学校まで来てくれるなら
買い物に付き合ってもらおうと思ったんだ」









なるほど。だからあえて 連絡はしなかったと。


千冬は心の中で納得しつつ、
"ごめんね"と小さく言った彼女に
"別に"と短く答えた。


口では色々出るが、正直
付き合わされるのは別に嫌いじゃない。


それは相手が彼女だから、に理由は尽きるが。


………その事は口には絶対出さないが。

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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月11日 0時

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