191.似た2人 ページ47
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「まぁ決めるのは君だ。考えてやるといい」
「はい…」
「とりあえず折角だ。
一年達に顔を出してやれ。釘崎も伏黒も気にしてたぞ」
この間の電話で伏黒に心配をかけてしまったのだろうか。釘崎達も側にいたようだし、伏黒から話は聞いているはず。
…顔くらい、見せに行ってみようか。
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「やっ、A」
…と思って医務室から出てみれば、タイミングが良いのか悪いのか。目の前を歩いてきた五条に捕まってしまった。
そういえばその人も任務とかで海外に行ってたんだっけ。…にしては帰ってくるの早くない?
「ねーぇ、なんでそんなに嫌そうな顔するの?
僕傷ついちゃうな」
「嫌そうな顔、してますか?」
「うん。すっごい顔してる」
「疲れてるからだと思います。
今はちょっと先生のテンションにはついていけなくて」
テンションの高い五条を目の前に、今は少し…本当にほんの少しだけ嫌だと思ってしまった。それが顔に出てしまったのだろうか。残念ながら今のAにはハイテンションな五条と会話する元気さは無い。
「……お疲れ。よく頑張ったね」
五条の表情が柔らかいものに変わる。そのまま手を伸ばした五条はAの頭に優しく手を乗せた。
「キミは、悠仁を守りきれたじゃないか」
「………それは、どうでしょうか。結局のところ、
今回も私は悠仁に守られてたような気がします」
守ったという自信のないA。その言葉は虎杖が七海に言った言葉と少し似ていた。"自分は助けていない"と。
「…悠仁に全部話したみたいだね」
「…恵みたいに、悠仁も私を受け入れてくれました」
2人とも自分の事を"人"だと
真っ直ぐな言葉をぶつけてくれた。
虎杖と伏黒。2人はどこか違うのに似ているように見えた。
「猫が私だと知っても幻滅せずに、
むしろ私で良かったなんて言ってくれて…」
変だなとさえ思った。
「善人すぎる彼を、私はやっぱり守りたいって
改めて思って…」
何かを決めたような、
強い覚悟の目が五条に向く。
「先生。私は、悠仁の"式神"として彼を守ります。
守っていきます。今回のことを得て、そう 決めました」
呪いじゃない、人だとそう言ってくれた彼。
でも守るには人のままじゃいられない。
けどそれでも良い。だからこそ、式神に徹底したい。
虎杖の隣に立つ時は、"式神の白神A"でありたい。
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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時