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189.引き金 ページ45






「安静にしてろと言われたでしょう、虎杖君」









黒い布に包まれた遺体が並ぶ部屋。
七海の隣には虎杖が立っている。




気絶していた虎杖だが、Aにあの場で反転術式で治癒された。そのおかげで危険な状態は免れつつ、高専に運ばれた虎杖は数時間後に目を覚ました。

反転術式で治されたとはいえ、念の為に家入に診てもらう。
そんな彼女は虎杖に、傷はほぼ治っているが安静にしていろ、と言われているのだった。









「説教?
命を助けてもらった相手に説教もクソもないでしょう」




「…俺が?」









説教は後ですると言った七海。
覚悟して聞いてみれば、もう七海には虎杖を説教するつもりは無かった。









「奴の術式は他人の魂に干渉する。
君が領域に侵入した事で
宿儺の逆撫に触れてしまったのでしょう。
おかげで助かりました」




「でも俺代わってねぇよ」




「宿儺が出たのではなく、奴が入ったんです」




「じゃあ助けたのは俺じゃない。コイツの気まぐれだ。
…それに、Aがいなきゃ俺は
ただ"どうしよう"って騒いでるだけだった。
冷静なアイツが俺に指示してくれなきゃ多分、
あの領域を破れもしなかった」









こちらを見ないで遺体に視線を向けている虎杖は明らかに沈んでいた。









「…ナナミン、俺は今日人を殺したよ」









人は死ぬ、それは仕方がない。
それならせめて正しく死んでほしい…
ずっと、そう思ってきた。


だから引金を引かせない事ばかりを考えていた。でも自分で引金を引いてしまい、分からなくなった。









「正しい死って何?」









根本的に思っていた事が、分からなくなった。自分の道が、分からない。









「そんな事、私にだって分かりませんよ。
善人が安らかに、
悪人が罰を受け死ぬ事が正しいとしても
世の中の多くの人は善人でも悪人でもない。

死は万人の終着ですが、同じ死は存在しない。
それらを全て正しく導くというのはきっと苦しい。
私はお勧めしません。

…などと言っても君はやるのでしょうね」









七海もその答えは分からない。
その答えを探すというのはとても難しいだろう
答えが出る日が来るのだろうか。









「死なない程度にして下さいよ。
今日君がいなければ私が死んでいたように
君を必要とする人がこれから大勢現れる。
_____虎杖君はもう、呪術師なんですから」









"要するに、私もアナタを術師として認めていない"




以前そう言った七海がハッキリと、
虎杖を呪術師として認める言葉を口にした。









「…それと、今のあなたの心情は
知っての通り白神さんにも伝わっています。
彼女も色々と考える人です。
あまり心配はかけないように」









そのまま去っていく七海が部屋を出て行き、扉は音を立てて閉まった。


様々な感情が混ざり合い、虎杖の顔は今にも泣いてしまいそうに見えた。

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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時

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