188.限界 ページ44
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「(これは、私じゃない。悠仁!!?)」
変身を解いて人の姿になると地面に倒れた虎杖の姿を発見。すぐさまAは駆け寄った。
「私達も追いましょう_____！虎杖君!!」
電話を切った七海は今気付いた。倒れる虎杖と彼の側にいるAの姿に。
「(動け体!!殺すんだろ!!アイツを!!
グチャグチャに叩き殺……)」
「虎杖君！しっかりして下さい!!」
「……もういい。悠仁。何も考えないで」
まだ動こうとしている虎杖の気持ちに応えるA。
「七海さん、追って下さい。
悠仁には私が付いてますから。ここは任せてください」
「………いえ。追いません。猪野君に任せましょう」
「えっ、ですが…」
「君達を守る事の方が、優先です。
結果的に、助けられたのは私ですが。
それにどの道、奴はもうどこかに身を潜めている筈」
追いかけたところで結果は変わらない。きっと見つける事は出来ないだろうと七海は言った。
「………今は、気を失ってるだけです」
「…そうですか。すぐに彼を運んで_____」
「待って下さい。その前に」
Aは右手を虎杖の前に出す。その瞬間、白い光が虎杖を包んで彼の怪我が少しずつ治っていくのが分かった。その光景に七海は目を丸くする。
「呪力による治癒、反転術式を使えるんですか」
「使い物になったのはさっきです。それに私の場合は、
人よりもそう難しい事ではないらしいので。
すごくはないです」
虎杖の怪我が治っていくと、白い光は消える。Aは疲れた様に息切れをしていた。
「でも、ちょっと疲れます…」
「…当然です。それに貴方の場合、虎杖君の痛みも共有しているのでしょう。今の虎杖君が反転術式を使った様なものです。そうして起きてられるのが奇跡な程に」
「不便ですよね、こんな体も」
「契りというのはそういうものです」
気持ちだけではなく
怪我や痛みなども共有してしまうこの体。
今起きているのが自分はやっとなのだけど、
仮に自分が人に耐えられない様な痛みを
感じていたとしたら彼は耐えられるだろうか。
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作者名：結祈華
| 作成日時：2023年2月5日 0時
