187.バイバイ ページ43
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「必要ありません。
それはもう、大勢の方に頂きました。悔いはない」
真人の言葉に鼻眼鏡を外し、爽やかすぎる顔で七海は覚悟を決めていた。それは、死ぬ覚悟__
ﾊﾟﾘﾝ
次の瞬間、この暗闇の世界に頭上から光が入り込んだ。音と共に、白い帯がその腰に巻かれており、降って来る虎杖の姿。
決壊術は内からの耐性を上げる程、外からの力に弱くなる。Aが睨んだ通り割れた真人の領域。
そして、真人の領域に入った虎杖。そんな彼の中にある、触れてはいけないものに真人は触れてしまった。
「言ったはずだぞ。二度はないと」
宿儺は怒った。指を立てる。そして、真人の左肩から血が溢れた。
「「！」」
その光景に目を見開く虎杖と七海。
天上天下、唯我独尊。
両面宿儺…彼にとって
七海が死のうと真人が死のうとどうでもいい。
唯一の好機は"1人と1体"。
それ以外は、心底どうでもいい。
真人が肩を押さえて地面に膝をつく。あたりの景色が変わり、外にいたAの猫の姿が見える。真人の領域が壊れたのだとその時悟った。
外にいたAは何が起きたのか分からない。領域に入り込めたとしても、虎杖が一瞬で領域を完全に壊す事は出来ないはず。……となると、やったのは宿儺なのか。
「何が起こったんだ…？」
虎杖にも状況が読めていない。
突如倒れた怨敵を前に0.1秒の自失。
その間に走った思考の上澄み_____殺せる。
虎杖は"殺す"事だけを考えて走り出した。
領域展開の呪力消費に真人側もかなりキツい。絞り出した最後の呪力を使い、自身の体を大きくした。
「(的がデカい、呪力の流れも凪いでいる。
カウンターはない。確実に攻撃を当てられる)」
最後の好機。駆け引きはもういらない。
そこにあるのは限りなく、透明な殺意。
_____ 逕庭拳
虎杖の拳は強く、それに当たった。パァンと音を立てて割れたそれはまるで風船の様。
「(なっ_____なんだこの手応えのなさは!!)」
ハリボテだと知ったその瞬間、Aと七海は既に動いていた。学校の端、用水路のグレーチングの上に立ち、体を小さくさせた真人が手をあげている。
「バイバぁ〜イ」
「待て!!」
「楽しかったよ」
そこに猫の帯と七海の武器が振り落とされた。グレーチングごと貫いたが…
「(…ッ、間に合わなかった)」
逃げられてしまった。
「チッ。猪野君、本丸が排水口から逃走しました。
えぇ、私といた地点から_____」
七海が急いで誰かと電話をしている。その瞬間走った痛み、疲労。"うっ"と声を漏らしたA。
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作者名：結祈華
| 作成日時：2023年2月5日 0時
