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177.一緒に ページ33






「順平が何言ってんだか、ひとっつも分かんねぇ。
それらしい理屈をこねたって、
オマエはただ、自分が正しいって思いたいだけだろ」









"式神使いは術師本人を叩きな"。


その言葉は以前五条が教えてくれた言葉。それに基づき虎杖は吉野へ迫る。そして拳を一発食らわせた。









カシャン









吹っ飛ばされた吉野は再び、窓ガラスを突き破って校舎の中、廊下に倒れる。









「順平の動機は知らん。何か理由があるんだろ。
でもそれは本当に、あの生活を捨ててまでのことなのか?
人の心がまやかしなんて、あの人の前で言えんのかよ!!」









虎杖の頭の中に昨夜の出来事が蘇る。それは吉野家で食事をしたあの光景。吉野順平…彼の母親の姿。









「人に心なんてない」




「オマエっまだ」




「ないんだよ!!そうでなきゃ…そうでなきゃ!!
母さんも僕も、人の心に呪われたって言うのか」









虎杖は目を見開く。倒れた吉野が体を起こし、顔を上げた。…その顔は、泣いていた。









「そんなの、あんまりじゃないか…。
もう何が正しくて、何が間違っているのかも…」









消えていた澱月が吉野の後ろから出てくる。吉野は指を立てて手を前に出すと、澱月の鋭い触手が虎杖へ伸びていく。そして、









ドドッ









2本の触手は虎杖の体を貫いていた。









「なっ…なんで避けないんだよ…」









避ける素振りを見せなかった虎杖。刺されたそこからはボタボタと血が溢れる。


驚いた吉野。乱れた心のせいで澱月は消えていて、触手から解放された虎杖はフラつく足を動かして吉野の前にしゃがみ込む。









「ごめん。何も知らないのに偉そうなこと言った。
何があったか、話してくれ。
俺はもう、絶対に順平を呪ったりしない。
だから…!」









 














 




ポツリポツリと吉野は虎杖に話していた。母親が、呪い殺されてしまったことを。

その事実に相槌を打つ虎杖の声も震えていた。冷たくなった、吉野の手を虎杖は握る。









「順平、高専に来いよ。
バカみてぇに強い先生とか、
頼りになる仲間がいっぱいいるんだ。
皆で協力すれば、順平の母ちゃんを呪った奴も見つかる。
必ず報いを受けさせてやる」









顔を上げて吉野を真っ直ぐに見た虎杖の顔は、とても力強かった。









「一緒に戦おう」









そう言ったその瞬間、吉野の後ろにある階段から誰かが歩いてきた。









「誰だ」









虎杖は警戒する。目の前を歩く男は、気配が妙。

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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時

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