174.間違えたくない ページ30
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特に返事をするわけでもなく、女は静かに頷いた。
「……今の話を聞いていたなら、
貴方が今すべき事は分かりますね。"白神さん"」
「……」
分かっている、でももう少し…もう少し時間が欲しい。
七海の顔から目を逸らすと彼はため息をついてそのまま歩いて行った。
・
七海が一人で出て行ってから数時間後。
ある連絡が"窓"からあった。
それは、とある学校に予定のない帳が降りているとの事。
しかもその学校は、里桜高校。吉野順平の学校だ。
何かが繋がりかける。
吉野順平は絶対にそこにいると、虎杖の中で予感がする。
「……俺は行くよ。ナナミン」
「駄目です。理由は、今朝も言いましたね」
伊地知が後ろに立つ中、虎杖は七海に電話をかける。
数時間前に七海に止められたばかりだけれど、これこそ譲れない。順平がそこにいる、それならば自分が行かなきゃ駄目なのだ。
吉野順平の監視が自分の役目なら、
彼がどんな場所にいようと そこに行くのは自分の役目。
「帳まで降りたとなると、
奴は生きている上里桜高校にいる可能性が高い。
すぐ戻ります。虎杖君は待機していて下さい」
その言葉を最後に七海との電話を切る虎杖。
七海の言う"奴"とは、
昨日 七海が戦ったとなる特級相当の呪霊の事。
その呪霊に順平…行く理由しかない。
ポケットに携帯を入れて後ろを振り返る。未だ立つ伊地知は行手を阻む様にそこに立っていた。
「…退いてくれ。伊地知さん」
「私達の仕事は人助けです。
その中にはまだ、君達学生も含まれます。
行ってはいけません。虎杖君」
"私はもう間違えない"と、伊地知は心で強く思う。彼の頭に浮かぶのは少年院での虎杖。あの時の様はもう御免。
ﾀｯ
「(……ごめん、伊地知さん)」
しかし、虎杖は伊地知の横を通り過ぎて走って行った。振り返れない伊地知は暫くその場に立ち尽くしている。
「……はぁ…」
その様子を見ていた、隠れているAは大きくため息をつく。そして伊地知の前へと姿を表した。
「伊地知さん」
「！白神、さん!!?」
予想していなかったのか、目の前のAの姿に伊地知は目を見開く。
「いつお戻りに……」
「もう朝方にはこっちに。
七海さんにはバレてましたけど…
すみません。お伝えできなくて」
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作者名：結祈華
| 作成日時：2023年2月5日 0時
