168.喰べろ ページ24
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「………虎杖君を、侮辱するな」
鋭くAは男を睨みつける。
「………そうか。
今はまだ、そのまま 虎杖悠仁の式神でいるといい」
「(今はまだ……どういう意味…?)」
不敵に笑った男はそのまま背を向けて歩き出そうとする。
「待て!
……貴方をこのまま逃すと思いますか?
充分過ぎるほどに不審者です。
私とついてきてもらえませんか」
「………やめておきなさい」
次の瞬間、一瞬にして目の前に何体かの呪霊が現れた。
「キミに私は捕まえられない。…それに、いい機会だ。
_____白神A、力を蓄えるといい」
意味深な言葉を追求する間もなく、男の姿を見失う。残されたのは呪霊だけ。Aはすぐに猫の姿に変わると、呪霊に向かっていった。
・
小さな体で一本のみの帯を振り回し、3体の呪霊を相手にしていた。被害を出さず、狭いこの場で動けるのは限りがある。
更に呪霊は2級。面倒な相手。
一本の帯だけで本来の力を発揮出来ずにいた。
「(ッ、面倒なの置いてきやがって)」
既にこの場にいない男の存在に眉を寄せる。しかし今はこの呪い達を何とかしなくてはならない。
息が苦しい。
自分の呼吸が荒い。
ダメだ、何も考えるな。
コレを祓う事だけを考え_____
「_____キミには祓えるはずだよ」
ふと、耳に入った声。それは、既にこの場にいない筈の…あの男の声だった。どこにいるのか、慌てて辺りを見回す。しかしその姿はない。
「簡単な事さ。そいつらを_____喰えばいい」
「_____ッ!!?」
思わず体が硬直した。
こんな男の言葉、聞かなければいいのに何故か聞かずにはいられない。
だってその案は、以前も考えた事のあるものだったから。
「それを食べて、呪力を蓄えればいい。
呪いを食べて力を得るのは、
"呪い"なら突然だろ」
黙れ。
「食べて呪力を得ればいい」
うるさい。喋るな。
頭が痛い、思わず耳を塞ぎたくなる。
近くにいないのに近くにいる、
耳元で話しかけられている様なこの声。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
「拒む事はない。だってキミは、強くなりたいんだろ?」
「ッ………」
「呪いを食べて、呪力を得る。食べろ、白神A」
「…………食べ、る」
「そうだよ」
子供を褒める様に柔らかい肯定する声。
何かに操られる様に、私は何も考えられなかった。
何も考えられなくて、結果…
_____呪霊に牙を突き立てていた。
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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時