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166.伝わらない ページ22






「悠仁君 どう?晩飯食べてかない?」









突然、家に虎杖を誘った吉野の母親。









「ちょっと!!迷惑だろ!」




「私の飯が迷惑?あ"ん?」









言い合っている吉野親子の前に虎杖は立ち尽くす。そんな彼のズボンの裾を噛み、猫は引っ張った。









「?A?……どうした?」









猫の様子に疑問を持ち、虎杖は心配する様にしゃがみ込む。









「ニャァ、ニャ!

(彼の家に行くのは良くない気がする。
母親の方は心配はいらないかもしれないけど、
彼の方は違う。家に行くのは、危険だ)」









心の中で家に行くのはマズイと判断し、必死に猫の鳴き声を出すA。だけど伝わらないのか、虎杖は困った様に笑うだけ。




_____行っちゃダメ。




ハッキリと、伝わればいいのに何で









グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ









その瞬間、虎杖の大きなお腹の音が聞こえた。

それは吉野親子も同じだった様で、2人の言い合いも止まる。









「嫌いなもんある?アレルギーとか」




「ないっス!!」









虎杖が彼の家に行こうと足を動かそうとした。


止めるべく、再び猫は虎杖のズボンを強く噛んだ。









「ン "ニ"ャァァア!」




「オイ…どうしたんだよ」




「猫ちゃんも一緒においで」




「ほら、お母さんもこう言ってくれてるしさ」









"伊地知さんには後で連絡入れておくから"なんて宥めようとする虎杖。それでも猫は噛むのをやめない。流石の虎杖も表情が段々と曇っていく。









「なぁ、噛むのやめろって」









小さな体は虎杖の手に簡単に振り払われてしまう。眉を寄せて虎杖を見上げれば、彼もまた眉を寄せた。









「……何怒ってんだよ」




「……ニ"ャア"ッ」




「俺、オマエの言ってる事全然分かんねぇよ。
嫌ならさ、とりあえずオマエだけでも伊地知さんのとこ戻ってろよ。俺もあんまし長居しない様にするからさ」









_____どうして、どうして伝わらないの。
分かってよ、虎杖くん

……それとも、キミは彼を信頼してるの?




全く疑っていない様なその素振り。
明らかにそうとしか考えられない。

吉野順平はただの友達。
ただの友達の家にこれから遊びに行く…
そんな虎杖の態度。




虎杖を守る事を考えるAは、彼を危険から遠ざけたかった。彼女の心は今ただそれだけ。優先すべき事は、虎杖の安全のみ。









_____何で分かってくれないの!









「……ッ、シャーーーッ」









怒る様に、虎杖に向けて明らかな威嚇をしていた。そこまでの態度を見せられて、流石に驚いた虎杖。


そして猫は、そのまま背を向けて走って行ってしまった。

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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時

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