147.赤子 ページ3
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「フゥ、ギリギリセーフ」
「おかか！」
「うん、まぁアウトっちゃアウトか。
A、オマエまで戦おうとするな」
やっと聞こえたのは止めるパンダの声。
心配する狗巻の声も聞こえ、
Aはその場に崩れるように座り込む。
深呼吸を何度かして心を落ち着ける。
「……久しぶりだな、パンダ」
「なんで交流会まで我慢できないかね。
帰った帰った。大きい声出すぞ、いやーんって」
「言われなくても帰る所だ」
頭をぽりぽりとかき、忘れた上着の事を思い出す。
ふと、伏黒とAの姿を東堂が目を向けた。
「どうやら、退屈し通しってワケでもなさそうだ。
乙骨に伝えとけ。"オマエも出ろ"と」
「………オレパンダ、ニンゲンノコトバワカラナイ」
去っていく東堂の背中を見て面倒だと思ったパンダ。
その横でハッとしたAが伏黒の方へ顔を向けた。
「恵！大丈夫…じゃないよね」
「…大丈夫だ。治る傷だ、オマエと違って」
「……大丈夫じゃないって、いいなよ」
伏黒に駆け寄るAはジッと傷を見つめる。
伏黒と目の合わないAの様子は
彼にとってどこかおかしく見えた。
だから、少しの嫌味のような言葉を含めて言った。
何か反論してくると。
……でも、彼女の様子は変わらない。
「………」
「…A？」
すると、Aは伏黒の傷口に手を伸ばして宙で止まる。
そのまま力を入れて何をしているのかと思いかけた時、その手から白い光のようなものが小さく揺らめいた。
これは、
「「((反転術式…？))」」
反転術式を利用し、
伏黒の傷を治そうとしているとその姿から分かった。
初めて見るそれに、伏黒達は驚く。しかし、
「……っ」
その光は消えてしまい、
Aの息切れの声だけが残った。
「…はぁ、はぁ、っ、ごめ、待って」
「A、無理するな」
「おかか」
「家入先生の所に行くから。無理するな」
無理をして頑張っている様子のAに
心配はいらないと声をかける。
その瞬間、Aが伏黒に顔を上げた。
その顔に、伏黒は驚いた。だって、彼女は
「っ、ごめ、なさい……」
_____泣いていた。
「出来なくて、ごめ、な、さい……
出来るように、する、から…頑張る、から」
まるで、赤子のように声を上げて
必死でしがみつくように伏黒の制服を握る。
その目は伏黒を見ているようで見ていない。
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作者名：結祈華
| 作成日時：2023年2月5日 0時
