159.悪趣味 ページ15
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「そうだ。虎杖は聞いてるか?」
「あ、ウス」
「コイツらの死因はザックリ言うと、
体を改造させられた事によるショック死だ。
君が殺したんじゃない。その辺り履き違えるなよ」
「はい…」
家入が励ます様な言葉を言う。しかし虎杖の顔は晴れない。
彼の中では"人を殺した"という
認識をしてしまっているのだろう。
……何故か分かる。虎杖君の気持ちが。
これも私が彼の式神であるという
結びがあるからなのだろうか。
もしかしたら、いずれ
私の気持ちも彼に知られてしまう時が来るのだろうか。
「Aもいるか?」
「………」
「…いるなら返事をしろ」
「…ニャ……」
不意に家入から呼びかけられるA。
返事に戸惑っていると虎杖と七海からの視線、
ついでに家入の言葉に致し方なく返事をした。
「"キミは違う"。…私の言ってる意味、分かるな?」
分かる。家入は言ってくれているのだ。
自分と呪霊に変えられてしまった人間とは違うと。
…でも、道が違えば私もあんなになっていたのか。
完璧な、あの呪霊に。
「…キミは色々と深く考えすぎるからな。
でもそれだと体がもたないぞ」
そうは言われても色々考えてしまう。
その時、頭に誰かの手がフワッと乗る。
顔を上げてみれば、そこには虎杖がいた。
励ましてくれる様な優しいその手。
「…2人とも、その猫の事頼んだよ」
「分かっています」
「はい!そういえば、五条先生からもそんな事言われたな」
それを最後に家入との通話を切る。
静まり返るその部屋に改めて緊迫が走った。
「どっちもさ、俺にとっては同じ重さの他人の死だ。
それでもこれは…趣味が悪すぎだろ」
ピリピリと虎杖の顔色から怒りの様子が読み取れる。
表情よりも心の方は更に複雑で、Aの心もまた痛む。
他人の為に本気で怒れる者はそういない。
「あの残穢自体ブラフで、私達は誘い込まれたのでしょう」
座っていた七海が先に立ち上がる。
「相当なヤリ手です。これはそこそこでは済みそうにない。
気張っていきましょう」
「「応!!/ニャッ!!」」
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作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月5日 0時