46.挨拶 ページ46
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「でも、私はこの人に死んでほしくない、
傷ついてほしくない、だから助けたの。
私なんかを人間だって言ってくれた、
この人を守りたいと思った」
「………ははっ……まあ、収穫はあったかな」
姿を変えて、Aは真っ白い姿になった。
それを見て更に笑みを深める男。
「その気持ちが強くなれば、
君もいつかは本来の姿に目覚めるだろう。
今の君は、まだ未完成だからね」
この人、何を言っている…
意味がわからなくて、Aは猫の唸る声を上げる。
男は一歩ずつ後ろに下がっていき、
Aの目の前には呪霊が立ちはだかる。
このまま男は逃げる気なのだろうか。
「今日は挨拶だけだからね、ここまでにするよ。
君の今の記憶は、残念だけど私が消させてもらう。
その前に君にはこの呪霊と交えてもらうけど…
今の君じゃ、これは祓えないだろうね」
1級の呪霊……確かに、Aは痛感はしていた
いくら呪霊との対峙が初めてではなくとも、
ここまでの階級を相手にしたことは無かった。
伏黒がやられた様子や呪霊の動き、あの技…
それらを見て足が少しだけすくむ。
でもやらなければ、逃げる事は許されない。
後ろの伏黒をチラリと見て、
Aは帯を振りまわし、呪霊に向かって走り出した。
・
伏黒とAが任務の為に入っていった
建物を見上げながら異変を感じ、
伊地知は高専で待機している五条に連絡した。
伊地知は五条から連絡があると
すぐにこの場所に現れた。
見たところ、伊地知の張った帳の上から
更に帳が下されてる状態で、
五条はその帳を無理矢理に破った。
建物内に入ってみれば、辺りは静か。
創作してみればボロボロで倒れる
Aと伏黒の2人を五条は見つけ、
まずはAに駆け寄った。
Aの背中に手を入れ、軽く起こすと体を揺する。
声をかけながら譲ってみれば、
"ぅ"と小さく声を上げながら薄らとAの目が開いた。
「A!何があった」
切羽詰まる顔をする五条を
Aはボヤける視界のまま捉えていた。
ああ、自分はあの呪霊に負けたのだ。
そう認識するまでには時間が掛からなくて、
少しして頭が痛く、ふわふわしてくる様子に
焦りを覚えた。
まずい、そう判断したAは
五条の言葉に答えずに、彼に伝えなくてはと一心で
シャツを掴むと小さく口を開いた。
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作者名:結祈華 | 作成日時:2022年12月21日 15時