31.組手 ページ31
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Aは少し反応に遅れ、微妙な返事になってしまった。
「大丈夫?白神さん」
「乙骨ー、あんま甘やかすんじゃねぇよ?」
「ぼ、僕はそんなつもりじゃ…!」
「大丈夫、だと思います…未経験ではないので」
「…へぇ…面白ぇ…」
そう言った瞬間に、真希の目はギラつき
楽しそうな笑みを浮かべた。
だが、驚いたのは他の皆も同じだ。
皆、彼女は未経験だと思っていたから。
子供の頃から2足で立てるようになってきてから
色々訓練はしてきた。
…というよりもされてきた、だが。
他の、人の子供とは違うAは
成長速度が段違く、
赤子や子供の頃から物事を考える事が出来ていた
当然、身体においてもだ。
「あの、組み手は
この
「あーー、そうだな…
猫の姿でも組み手なんてやってたのか?」
「まあ、二つ足と四つ足は
だいぶ感覚も動き方も違うので…」
分かりました、と答えたAは
校庭の真ん中に歩いて行き
人の姿のまま伏黒と向き合った。
1度目を閉じて深呼吸をし、
次に目を開けたAは雰囲気が変わっていた。
その真剣な雰囲気は、周りの誰もを
圧倒させる程のものだった。
そんなAを正面に見た伏黒は
少しばかり体が固まった。
「あの雰囲気……本気、だな」
「すじこ…」
「ハイハイ、恵 ビビってないでいけよ」
「ビビってません」
「2人とも頑張れ!」
伏黒は息を吐き、Aの方へと歩くと構えた。
誰もが静かに、そんな2人を
離れたところから見守る。
互いに睨み合い、どちらが先に動くのか…
_____先に動いたのは伏黒だった。
伏黒の先手をAは簡単にかわした。
けれど、Aの攻撃も伏黒は避ける。
どちらも一歩も譲らない、が……
「っ、は?」
「……」
尋常じゃない動きのせいで、
自分は地面に倒れていた…
_____伏黒は、Aに負けていたのだ。
「う、嘘だろ…?
いくら経験が浅い恵でも、あんな…」
「こんぶ」
「すごいね、白神さん」
「真希とも良い勝負になるんじゃないか?」
Aは動きが素早く、体も柔らかい。
テンポよく動き、Aは伏黒を翻弄した。
地面から体を起こしながら
伏黒はAを見上げたが、
Aはほとんど息切れをしていなかった。
地面を見ていたAは伏黒の方を見て
申し訳なさそうな顔をした。
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作者名:結祈華 | 作成日時:2022年12月21日 15時