2.秘密 ページ2
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姿を変えたAは四つん這いのまま再び、
路地の奥へと向かって走り出す。
タッタッタッと1人…
いや、1匹が駆ける音がしばらく響き
ようやく足を止めた。
その先にいたのは、1体の呪霊。
「カエル、カエル、オウチニカエリマショウォォ」
何かを呟く呪霊と、それを見るA。
呪霊がこちらを見たが為に目が合った。
ゆっくりと、呪霊が
こちらに近づこうとしてくるのが分かる。
ブラウン色の瞳をしていた
Aの瞳の色が黄色に変わる。
その瞬間、Aは小さな体で
その場の地面を蹴って、宙へと飛んだ。
呪霊を見下ろす形になると、首元の帯を動かす
その帯が呪霊にあたり、
呪霊が軽く吹っ飛ぶと、
その呪霊はたちまち消えていった。
この間、本当に一瞬に過ぎなかった。
スタッと地面に着地したAは
先程まで呪霊がいた場所を振り返る。
その時の瞳の色は、ブラウン色に戻っていた。
低級呪霊、か……ま、それもそうか…
こんなところにレベルの高い呪霊が現れても困る。
何て考えるAは来た道を戻るように歩き出す。
もう一度言う、Aの秘密はまさにこれ。
人間の見た目から、
猫のような動物へと変身ができるのだ。
しかし、ただそれだけならまだマシだろう。
Aの場合、姿を変えるのは
ただの動物ではなくて……
_____呪力を宿す、式神なのだ。
そんなAは普段 人として暮らしている傍ら、
呪霊の気配を見つけると、自分の姿を変えて祓っていた
………だが、式神と
断言してしまって良いのかは謎。
本来、式神というのは
術師が召喚したりするもの。
Aの場合、それには全く当てはまらない。
それに、本来呪霊や式神は
しかしAは猫の姿になっても、
もちろん人の姿でも一般人に認識されるのだった。
その為、呪力をただ宿すAは…
_____呪霊であるかもしれない。
式神なのか呪霊なのか、はたまた化け物なのか
普通の人間では無い事を分かっても
そればかりはAには分からなかった。
ただ一つ言えるのは…
人間になりたかった_____
「……ニャァァ」
小さな猫の鳴き声が口から漏れた。
姿を変えている間、Aは
人間の言葉を話すことが出来ない。
ため息をしたつもりでもこうして、
猫の声として発してしまうのだ。
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作者名:結祈華 | 作成日時:2022年12月21日 15時