男勝りなあいつの"女"を見た瞬間２【松野千冬】

89.男勝りは変わらない ページ42

「神崎さん…本当に、ありがとう。
普通、彼氏の俺がガツンと
あいつらに言わなきゃいけないのに…
俺、ビビっちまって…」




「ほんとだよ！
優斗よりも神崎さんの方がカッコいい！」




「ッ…言われなくたって分かってるっての」









2人の会話と笑顔を見て
神崎は微笑ましいなと見ていた。









　









「_____A!!」









その時、彼の声が響いた。


ピクッと反応して
声が聞こえた方を向いてみれば
息切れをした千冬が立っていた。









「…あれ？松野くん？」









千冬は呼吸を整えながら神崎の隣に歩き、
カップルの2人を不思議そうに見た。









「……A？こいつら…」




「今ね！神崎さんに助けてもらったの！」




「_____は？」




「ッ、あ……」









千冬の呆れたような声が漏れる。


カップルの2人は先程の出来事を
綺麗かつ簡潔に千冬に話し続けた。


神崎は話して欲しくないと止めようとするも
2人が聞いてくれるわけがなく、

隣にいる千冬の視線を感じながらも
目を逸らしていた。









「………ふぅん…こいつ、喧嘩してたんだ」









可愛くないとか嫌だって思われただろうか。


不安でいっぱいの神崎…

すると、神崎の頬に柔らかい感触と
少しの痛みを感じた。









「ッ」




「悪ぃ、やっぱ痛むか？」









横目で見てみれば、
千冬の手が自分の頬にあてられて
指で優しくなぞられた。


その部分は、先程
男の拳が掠めてしまった部分。


少し悲しそうな目をした千冬は
傷口を優しくなぞった。









「…………………だいじょーぶ、だよ？」




「…おまえが大丈夫でもオレが大丈夫じゃない
さっきの男、どっち逃げた？」




「いや待って、
追おうとするな、しなくていい」









さりげなく男達を追おうとした千冬を
すぐに神崎は止めた。


"Aに傷つけた奴は許せねぇ"とか言う
怒った顔をする千冬は
神崎の心臓をドクンと高鳴らす。


嬉しかった神崎は顔を赤らめて…

そんな神崎を見て、
カップルの2人が目を見開く。


2人の視線に気づき、
千冬はニッと笑うと神崎の手を絡め取って繋いだ。









「オレらも今デート中だからさ、そろそろ行くな」




「え_____」









千冬は神崎の手を引いて、
カップルの2人に挨拶してその場から離れた。


絶対に離さない、そう伝えるように
千冬の繋がれた手は強さを増した。

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