男勝りなあいつの"女"を見た瞬間２【松野千冬】

81.ただの口実 ページ34

「…A？」




「ねぇ、千冬……
千冬はこの後、少し平気？」




「え？」




「今の私の家(施設)に一緒に行こ!!」









先程とは逆で、今度は神崎が千冬の手を引いた


優しい目で千冬の手を引く神崎、
千冬はただそんな彼女を見つめ返していた。









「千冬 ボロボロだし、手当てさせて」




「…手当てなんて、
この傷は何ともねぇよ」




「……察しろよ、バカ千冬」




「は？」









傷の手当てをしたい、それは本心である。


だが、神崎の中には
もう一つの本心もあって…______









「千冬とまだ……
一緒にいたいっていったらどうする？」




「………………………なぁ、抱きしめていいか」




「ッ、こんなんじゃ進まないし
施設まで辿り着けないから!!」




「ハッ、
じゃあ、施設行ったら抱きしめていいか？」




「…バーカ」









ずっと会えていなかった神崎と千冬の2人。


思いは一緒で、まだ2人とも
離れがたかったのだった。









　









・









　









辿り着いた、今神崎が住む家。


数日前に千冬が聞いて
教えてくれなかった施設の場所を
千冬はやっと知ることが出来た。









「……」




「…A？」




「！ううん、何でもない……行こ」









施設である建物を見上げ、
動かない神崎を心配に声をかける千冬。


千冬に声をかけられた神崎は
何事も無かったかのように、
施設に向かって歩き出す。


千冬も彼女に続くように歩き出すが、
先程の神崎の顔……

まだ施設という場所に慣れていないのか、
緊張と不安さが伺えた。




玄関に行き、インターホンを鳴らすと
すぐに中から女性が数名出て来た。









「Aちゃん!!」









神崎の名前を呼び、1人の女性が抱きしめる。


他の女性も心配するかのように
神崎の周りに近寄った。









「連絡はもらったけど、遅かったわね…
心配してたのよ？」




「すみません、こんな遅くなってしまって…」




「でも、ここに来てから
Aちゃんって我儘言ったりしなかったから

今回、我儘言ってくれて
ちょっと嬉しかったりしたのよ」




「え？」









驚く神崎に優しく笑う施設の人。


何だか気恥ずかしくて、
神崎は少し視線を彷徨わせた。

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