男勝りなあいつの"女"を見た瞬間２【松野千冬】

76.初めての者同士 ページ29

「それにさ、オレだって初めてなんだぜ？」




「え？」




「おまえが…_____Aが、初めての彼女」









余裕そうに笑う千冬を見て、
本当に初めてなのかと疑ってしまう。


信じていないような神崎を見て
千冬は神崎の片手をとると
そのまま自分の体の胸元に触れさせた。









「ッ、え」




「オレの心臓…今、スゲー速ぇだろ？」









手で触れさせられた千冬の胸元から
彼の心臓の鼓動が手に伝わる。


その速度は自分と同じようで
神崎は目を丸くした。









「余裕じゃねぇよ、

今もオレ、おまえとこんな近ぇ距離で
こう見えても焦ってんだよ」




「…千冬」




「もう一回言う……
A、オレと付き合って下さい」




「………宜しく、お願い、します…」




「よしっ」









千冬の目を見て神崎は
小さな声になってしまったものの、頷いた。


神崎の答えを聞いて、
千冬は嬉しそうにガッツポーズをしている。









「じゃあ、行こうぜ A!!」









神崎から体を離し、
一歩後ろへ下がって距離を取る千冬。


そのまま千冬は手を差し出して
神崎はぎこちないながらもその手を掴む。


千冬は神崎の冷たくなった手を
大きな手で包むと、指を絡ませる。


手を繋いだまま、2人は
ドラケンやエマ、ヒナ達のいる場所へと歩いた









「…千冬、初めてが私って言ってくれたけど
こういうの…どこで知ったの？」




「は？………うるせぇ、何も聞くな」




「え、？」




「安心しろ、本当に…初めてだから」









とても、少女漫画等で知識を得たなんて
恥ずかしくて言えなかった千冬。









「(〜ッ、ヤベェ……)」









勢いでキスをしてしまった、
その感覚がまだ唇にあって
顔が熱くなる千冬。


柔らかくて暖かい感触、神崎の息遣い、
全部が千冬の頭をおかしくさせる。


隣の神崎を見てみれば
恥ずかしそうに手をキュッと握って
視線を彷徨わせる彼女。


目が合えば、
恥ずかしがりながらも笑ってくれる。


ただ、千冬の視線は
神崎の口元に向いてしまい…









「(あ"ーーッ、クソッ)」




「？」









千冬に握られた手が急に力が入り、
どうかしたのかと首を傾げた神崎だった。

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