男勝りなあいつの"女"を見た瞬間２【松野千冬】

65.思ってもない言葉 ページ18

「…なぁ、A…

おまえが喧嘩でしか
溜め込んでるもん吐き出せねぇなら
次からは、オレを殴れ」









無だった神崎が
ピクッと反応したのを千冬は見逃さなかった


同時に、神崎の驚いたような顔も見た。









「おまえの気持ちが晴れるまで、オレを殴れ…
他の奴じゃなくて、オレにぶつけろ
おまえに殴られるんなら、許してやる!!」









ニッと笑ってみせた千冬。


何故そんな顔が出来るのか、

神崎はキッと千冬を睨むと
千冬の方へズカズカと歩んでいく。


そのまま千冬の胸ぐらを掴むと
彼をそのまま地面に倒れさせ、
自分はその上に跨った。


周りからザワめく声も聞こえる。









「…ふざ、けるな、よ…」









震えた言葉が口から溢れ出て、
笑っていた千冬の顔はもう笑っていなくて
彼は真剣にこちらを見ていた。









「オレを殴れ？全部ぶつけろ？
…全部あんたのせいって分かんねぇのかよ!!

千冬と関わらなければ
私は前みたいにお母さんと一緒にいられた！

私は1人にならずに済んだ！

全部全部、千冬のせいだ！
余計なお世話した千冬のせい!!」




「A……」




「千冬なんか…_____大っ嫌い」









神崎の口からすんなり出た言葉は
千冬の心をズキッと痛めつけた。


開いた口から言葉が溢れて溢れて止まらなくて
神崎が気づいた時には
目の前に傷ついたように
悲しく笑う千冬の姿があった。


気づけば視界がボヤけていて
自分が泣いていることに気づく。


千冬は神崎の頬に手を伸ばし
涙を拭ってみせた。









「知ってる、Aがオレの事 嫌いなの」




「ッ、なら、何で…私に構う…」




「_____好きだから」









見開いた神崎の目は
ニッとまた笑った千冬の姿を映した。


その瞬間、ドキッと神崎の心臓は
大きく鳴ったのを自分自身で感じていた。


千冬と目が合って、何も言葉が出てこない。









「好きだから、Aの事 心配だし
辛い事も全部ぶつけてもらいてぇ。

おまえはオレの事
嫌いなのかもしれねぇけど、
オレは…_____Aがスッゲェ好きだ！」




「ッ」




「だからさ、泣くなよ A」









千冬に触れられている頬が熱を持つ。


変な気持ちになってきて、
神崎は体から力が抜けた。


千冬の手を振り払うと神崎は立ち上がり、
それ以上、何も言わずに
その場から歩いて行った。

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