それ、わたしじゃないです。【佐野万次郎】

rumor,34 ページ38

…まあ、授業中に乱入してこられたら
流石の私も逃げられないが、
何とかこれまではそんな事は無くて、
普通に過ごせていた。


何人かのクラスメイトが
"さっき佐野くん来てたね"なんて
話している声が聞こえて来て、

"誰か探してるみたいだったよね"って…
完全に私の事探してるんじゃないか、なんて
思ってしまった。




何とか佐野に会うのを回避しつつ、
給食を食べ終えて、今は昼休み。


この昼休みが1番の難関だな…と考えて
私はため息をついた。


他の休み時間と違う昼休み、
その理由はやはり、時間の長さだろう。


時間が長い昼休みは、
佐野が探すとしたら
私は見つかってしまう危険が大きい。


…本当は探さないでほしいと願うばかりだけど


そんな昼休み、私は
教室から離れた場所にある図書室に隠れていた


図書室には人が数人出入りしているものの、
私が隠れているのは 本棚の影…

しかもこの本棚に並ぶ本は
難しい本ばかりで、普段読む人が中々いない。


だから人も近づかないし、
奥にある棚だし…隠れるのには絶好！


ただ…不安なのは1人な事。


明那は先生に呼び出されて職員室…
このタイミングで呼び出しは勘弁よ、明那？


でもまあ…大丈夫だろう、

私はそのまま隠れて、
昼休みを乗り切る…_____はずだった。









　









ｶﾞｻｯ









　









背後から、何か音がした。


誰もいないはずだから、
何の音だろうと思って振り返ろうとしたその時









　









　









「…ッ、んっ!?」




「やっと捕まえた」









立っていた私は後ろから、
お腹に腕を回されて…

見知らぬ人に抱きつかれている状態だった。


声をあげようとすれば、
その口は後ろの人の手によって塞がれて
私は声なんて出せない。


そのまま体勢が崩れて、
後ろから倒れていく私。


トンッと尻もちをついて床に座り込むが
変わらず私は背後から抱きしめられたまま…


ッ、誰！こんな事する奴!!


暴れるけど、抱きしめるこいつは
力が強くて抵抗するにも出来ない。


お、男!?…はっ!?何で私、男に抱きつかれ_____









「バレるけど、いいの？」




「！」




「暴れても声出してもオレは良いけど
他の奴らにバレるよ、良いの」









背後から聞こえる声は
聞き覚えのある男の声だった。


…この声は、私が今日一日
見つからないようにって逃げていた相手…
_____佐野だ。

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