それ、わたしじゃないです。【佐野万次郎】 (ページ37)

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rumor,33 ページ37

明らかに彼女は
私を引いたような目で見ている、嫌だ…やだよ

明那はそんな顔をした後、
すぐに私を悲しそうな顔で見つめた。

……明那？どうし、たの…？

「私は、Aに傷ついて欲しくない」

「……明那？」

「だから佐野と…これ以上距離を詰めたり、
関わって欲しくない」

「…わた、し……傷ついてる、の？
でも昨日、楽しかったよ？それに_____」

「A……あなたはあいつと
その距離感のままでいられる？」

その距離感…とは？

「それ以上、求めない？」

それ以上…とは？

「男にあんまり慣れてないAだから、
そんなAだから…私は…」

「明那…そんな悲しい顔、しないでよ」

何で、明那がそんな顔をしているのか…

明那の言葉の意味だって、
私にはよくわからない。

きっと明那は分かってほしいのだろうけど。

けど一つの確かなこと…それは間違いなく、
明那は私が佐野と関わるのが嫌だと言うこと。

「…明那、私ちゃんとするよ」

「…A？」

「佐野には関わらないようにする、
明那はそれを望んでるんだよね？」

「！」

「分かったよ」

私が笑ってそう伝えると、
明那は優しく"ありがとう"と言ってくれた。

明那がそう言うのはきっと私の為。

佐野には、また食べに行こうなんて言ったけど
その約束は守れなさそうだ。

…やっと見つけた、同じものが好きな人…
その人と関われなくなるのは
少しだけ寂しかったりしたのは
私の気のせいか。

「食べに行くのは、
私が付き合ってあげるから」

「…やった！明那だいすき♡」

　

　

　

『うっま!!やっぱこの餡子だよな!!』

『お！佐野クン分かる!?
やっぱ良い舌持ってるね』

　

　

　

でもやっぱり、自分と同じくらい
甘いものが大好きな人と
一緒に食べたいな…
なんて思ってしまう私は我儘になっていた。

佐野とたい焼きを食べていた時のことを
思い出しかけて、首を振って消し去った。

　

・

　

朝、明那とそう話したその日
私は休み時間、神出鬼没の佐野に
見つからないように、コソコソ過ごしていた。