それ、わたしじゃないです。【佐野万次郎】 (ページ21)

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うーん、考えてもそれは無いと思う…

でも、こんな素敵な笑顔の唯さん見たら
否定するにも出来ない私。

「こんな私が言うのも変だけど、

人を好きになるきっかけなんて
本当に些細な事だと思う

だから、もしAさんに好きな人出来たら
私も全力で応援するから！
好きな人出来たら、まず私に教えてね！
約束!!」

唯さんはそう言うと、
私に小指を立てた右手を差し出した。

…これは、ゆびきりげんまんパターン？

いや、やっぱやる事が可愛すぎる。

「あ！明那さんよりも先に、私に報告だよ!!?」

「…う、うん…分かった

(まあ、そんな人私には出来ないと思うけど)」

内心そう思いながら
私は唯さんの小指に自分の小指を絡めて
ゆびきりげんまんをした。

恋の話をする仲間が増えようとしているのが
嬉しいのか、満面の笑みだ。

"Aさんと恋話するの楽しみだな"なんて
ピョンピョン小さく跳ねる唯さん。

…うん、やっぱ可愛い。

　

・

　

私達は今、中学3年生。

部活動に入っている子も引退して、
放課後は自由の時間が増えた。

高校に向けての勉強もまあ…必要だけれど
時には息抜きも必要…！ってことで、

「明那ーっ、行こー！」

「うわ、めっちゃ笑顔……」

「これが笑顔にならなくて何という」

「何も言わん…ま、行こうか」

今日は明那と放課後デートなのです。

鞄を持って笑って近づけば、
若干明那にはいつものように引かれるけど
何だかんだ、内心喜んでくれてる…と思ってる

明那と街の方に行って
甘いものを食べまくるの！

今日は朝からすっごい疲れたから
こんな癒しが欲しかった…

教室を急いで出て、
昇降口で靴を履き替えていると

　

　

　

「お！いたいた、Aちゃん」

靴を持つ手が思わず止まった。

…なーんか、聞きたくない声が聞こえた

…………無視無視、無視だ

ってか、昼休みと何か似てないか？

「おまえさ、教室から出るの早すぎ…
昼休みだって、探すの大変だったんだよ」

いや、誰もおまえに用ないし
探すな勝手に

"はぁ"とあからさまに
大きなため息をついてやって、
私は嫌々顔を声の主の方に向けた。