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厄災三十と一 ページ36

『やっぱりごまさんの髪って綺麗だよねぇ』

「ありがとうございます。初めて誰かに毛並みを誉められ、といて貰うのが主様で私も大変嬉しく思います。」

麗らかな遠足日和の翌日……。

早速とばかりに櫛を持参した小狐丸が、縁側で

足をぷらぷらと動かし寛ぐ虧月の元へ訪れた。

つい昨日仲間となった刀の来訪に満面の笑みを

浮かべた虧月の様子に歓迎は十分な程見て取れ

て……。

昨日交わした約束の為に隣へ腰をおろすと、そ

の髪を小さな手に握った櫛で優しくとかす。

心地の良いその手付きに頬を緩めながら甘受す

れば、虧月の言葉に蕩けたように笑みを浮かべ

て答えた。

『前の主さんは髪をとかしてくれなかったの?』

「……まぁ……前任はそのような事をするお人ではありませんでしたので……毛並みを綺麗であろうと櫛でとかすこともしませんでしたから……」




__……あまりにもあっさりと聞くものだ…………。



無邪気とも取れる虧月の声が、気遣うなどとは

程遠くに前任の話を口にする。

姿形のままに子どものような純粋な言葉に、思

わず言葉を詰まらせながら、忌々しい前任の思

い出を脳裏に甦らせて見れば、沈んだ小狐丸の

声とは裏腹に、あっけらかんとした虧月の声が

その声に頷いた。

『ふーん、そうなんだ。綺麗な髪なのに勿体ないね』

「……そもそも、そのような穏やかに話をするような仲ではありませんでしので……。前任を好いていた者などこの本丸には皆無でしょうから」

『嫌な人だったんだねぇ』

無邪気な言葉に視線が自然と足元に注がれる…。

そもそも、前任の話題など口にすることはおろ

か、思い出したくもない事柄なのだ。

いくら、主とはいえそう気軽に話せることでも

ない……。

内心では嫌だと拒んではみても、無邪気な言葉

に冷たく突き放すことも出来なかった……。



…………早く終わらないだろうか…………。



無関心とはいかないものの、何処か他人事のよ

うに話しを聞く虧月と、話したくもないものを

口にする小狐丸。

そんなことを思うのは当たり前のことで……。

力なく俯いた小狐丸に、虧月はとかし終えた櫛

を置くと、とかした髪に手を通しながら何でも

ないように言葉を続けた。

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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時

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