厄災二十と九 ページ34
『ごまさんは僕にお願いをしに来たんだよ。だから、僕は神さまだからお願いを叶えて、これからは僕がごまさんを温めてあげることにしたんだ』
「えっと……ごめん、主……言ってる意味分からないんだけど……」
「つまり、この小狐丸とかいう刀が何かしらの理由で虧月を襲撃したけど、逆に虧月に救われて虧月を主に認めたってことですね……」
「翻訳ありがとう」
虧月の不可解な言動を盈月が翻訳するのはもは
や当たり前として……
まずはどこからツッコんだら良いのやら……。
じっと飼い主の指示を待つ犬のように虧月を見
つめて微動だにしない小狐丸の後ろにはパタパ
タと揺れる尻尾さえ錯覚し見える程で……。
広間にすら姿を表せないほどに血に飢え、時折
鋭く仲間の首を物欲しそうに睨んでいたあの獣
が……今では懐柔された犬の如くほわほわとした
形容し難い空気を纏っているではないか……。
虧月の首元のガーゼと付着する赤いシミから何
があったかなど明白ではあるものの……我が主を
傷つけられて怒れば良いのか、正気に戻った仲
間に喜べば良いのかも分からなかった。
「要するに、此方の駒が増えたってことっすか」
「盈月…小狐丸を許すの?」
「まぁ、傷跡なんて残んねーですし」
「はい、我が身は主様の為に捧げるつもりです」
『一緒におやつ食べようね!』
しかし、主が良ければ全て良しと言ったところ
か……
いとも簡単にこの状況を呑み込んだ盈月が確認
に問いかけた言葉に小狐丸が頷く。
虧月が無邪気に笑って言えば、小狐丸は頬を染
めてこれまた嬉しそうに頷いた。
.
.
「戻ったか」
「三日月……」
虧月の部屋を後に寝静まった三条の部屋へと戻
った小狐丸が自身の籠を漁っていると、掛けら
れた静かな声に顔を上げれば、扇子で顔の半分
を隠した三日月が小狐丸を見つめていた。
「あの審神者はどうだった?」
どこか楽しむように掛けられた問いに小狐丸は
籠へ再び視線を戻すと、漁る手を再び動かしな
がらその問いに口を開く。
「あの御方は私には勿体無い程に尊く崇高で敬うべき主でした。穢れたこの私を優しく包み込み、血を授けてくださったばかりか、私を救ってくださったのです……」
「ほぅ……救ったとな?」
何処か恍惚とした様子で口元に笑みを乗せなが
ら語る小狐丸に三日月の瞳が興味深いとばかり
に細まる。
扇子に隠れた口角が弓なりにつり上がった。
327人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
【刀剣乱舞】顔を見せない審神者は愛されている事に気付かず、今日も隠すらしい。壱
【刀剣乱舞】笑顔の少女はブラック本丸に行くみたいです。参
もっと見る
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時