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厄災二十と六 ページ31

体格から俯いていた小狐丸の頭しか包むことが

出来なかったのだろう……。

それでも、薄い胸板に押し付けられるように抱

き締められたそれにじんわりと温もりが広がる

ような気がした……。


『小狐丸さんは、ずっと寒かったんだね』

「何を………」

抱き締めた虧月の突然の行動と言葉に体が強ば

る。

思わず問い返した言葉に、虧月は優しく頭を撫

でると、ぎゅっと今一度小狐丸を包み込んだ。

『大丈夫だよ、これからは僕が小狐丸さんを温めてあげる……小狐丸さんの温もりになるよ』

「ッ……」

『だからね……』

虧月の言葉に目を見開く。

まさか、斬ると話した相手に温もりを与えられ

るとは思いもよらなかった…。

『欲しいなら血をあげる』

「…言っている意味が分かって…ッ!?」

『分かってるよ、死んじゃわないくらいなら毎日だって、いくらでもあげるよ』

それも、血を与えるとも言うのだ…。

思いも寄らない言葉に思わず顔を上げて見上げ

れば、虧月は優しく微笑んだ…。

『だって、苦しいって言ってるひとに何か出来るんだったら、何かをしたいでしょ』

「何故……!」

……何故其ほどまでに優しい言葉をかけられる…。

そう問おうと開いた口から言葉は詰まり、続か

ない…。

それでも、途切れた言葉の続きが分かるのか、

虧月は当たり前のように無邪気に笑った。

『んー……やっぱり僕も一応神さまみたいだし、お願いされて叶えることが出来るなら叶えてあげたくなっちゃうのかな?』

「ッ……!!」

虧月の言葉に視界が揺らぐのが分かった……。

大きく揺らいだ視界は雫となって溢れだし、頬

を伝って溢れ落ちる。

縋りつくようにその小さな体を抱き締めれば、

小さな手が優しく小狐丸の背中を撫でた。


『一振で頑張ったね……偉いね、凄いね……。でも、寒かったよね、苦しかったよね』

「ッ……」

『これからは僕が温めるから……安心してね』

「ッあぁ……ッ!!」

後から後から溢れ落ちる涙が虧月の着物を濡ら

し、嗚咽が零れる。

壊れそうな程に強く抱き締めれば、ただ虧月は

優しく小狐丸の頭を撫で続けた……。



__嗚呼……これが"神様"というものなのか……。



禍ツ神であろうと何であろうと……

当たり前のように手を差しのべた……優しい温も

りをくれた……。

それだけで、小狐丸にとってこの小さな神様は

大切な敬うべき神となったのだ…。

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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください!めっちゃ好きです! (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます!!楽しみだと言っていただけて嬉しいです!最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります! (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます!!重症待機とは……!早く手入れという名の更新をせねばですね!(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです!応援してます! (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朔櫻 実桜 | 作成日時:2019年3月25日 17時

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