厄災二十と四 ページ29
「はて……狐が見当たらんようだが……」
月明かり照らす一室で、一振の刀が口を開く。
空に浮かぶ三日月をその目に宿して、見当たら
ない部屋の一員に袖を口元に当てて首を傾げた。
「小狐丸なら、新しい主のところだろう。今剣を連れてきた時に随分と血を纏っていたからな」
その問いに答えたのは、布団に寝かせた今剣に
寄り添う大きな薙刀で……
今剣の頭を優しく撫でながらも話題の彼の行動
に笑ってみせた。
「しかし……何故あぁも血を求めるのか……俺には理解出来んな」
「ふむ……アヤツも連日戦に身を置いていたからな……前任の命により"人"の命も斬ってからというもの……温かな血に魅力されてしまったようにも思える……」
「……彼は血に狂ってしまったからね……最近は"人"を斬る機会もないからこそ……血に飢えてるんだろう」
今は居ない彼が何をしようとしているのか知っ
ているのだろう。
知った上でその場から動こうとしないのは、彼
の気持ちを考慮した上なのか……はたまた新しい
審神者などどうなろうとも良いのか……。
恐らくどちらも当てはまるのであろう……
再び書物を読み始める大太刀と短刀の頭を撫で
る薙刀を背に目に三日月を納めた太刀が空に浮
かぶ自身の目と揃いの三日月を見上げる。
「どのように対応するのか……お手並み拝見といこうか……」
袖に隠した口元からその表情は伺えないが……
細めた瞼から、この状況を楽しんでいるように
も見えた…。
.
『血？』
血に飢えた目の前の獣に、虧月がきょとりと目
を丸くして首を傾げる。
虧月とて傷つけられる覚悟はしていようとも、
まさか、血を求められるとは思わなかったのか……。
小狐丸の言葉を返せば、交わる虧月の視線に小
狐丸は口を閉ざして目を反らした。
「…………いや…………今のは聞かなかったことにしてください」
先程までの飢えから理性を何とか繋ぎ止めたの
か……
自身が押し倒し、牙を突き立てようとしていた
幼子の姿に躊躇するように覆い被さる体を起こ
すと虧月から体を離す。
目前から退いた体に虧月が体を起こして小狐丸
を見つめれば、ばつが悪そうに顔を伏せて虧月
の視線から目を反らした。
『何で血が欲しかったの？』
「何故…と言われましても…」
純粋にも真っ直ぐな視線が小狐丸を貫く。
その言葉に言い淀み目を反らす小狐丸に虧月は
視線に入るように動き、その顔を覗き込んだ。
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不思議の国の有栖さん(プロフ) - 最高です (2021年1月15日 23時) (
レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
紫羅那@龍蓮(プロフ) - 更新頑張ってください！めっちゃ好きです！ (2020年3月11日 17時) (レス) id: 52a85e5aa6 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 羅維さん» 応援の御言葉ありがとうございます！！楽しみだと言っていただけて嬉しいです！最近中々更新ができませんが、なるべく早く更新できるように頑張ります！ (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - 闇夜さん» ありがとうございます！！重症待機とは……！早く手入れという名の更新をせねばですね！(笑) 好きだと言っていただけて嬉しいです！更新頑張ります (2019年5月14日 16時) (レス) id: b4a1ce9c3e (このIDを非表示/違反報告)
羅維(プロフ) - 続き、スゴく楽しみです！応援してます！ (2019年5月4日 12時) (レス) id: 11865369a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔櫻 実桜 | 作成日時：2019年3月25日 17時
