【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災十と六 ページ21

「知ってるって……何を」

「"逢魔が時"は"大禍時"とも言って、大きな災禍を蒙る時間帯であるとも言われてるんすよ……」

「それがどういう……」

「忘れたんすか？主は"禍ツ神"……災厄を司る神すよ……"何かがない"なんて……あの主がありえない」

流し目に視線を薄暗く染まった闇に移す。

その言葉を向けたのは加州なのか…はたまた違

う"誰か"なのか……。

「……まぁそもそも……虧月をやってなんかやらねーけど」

口角をつり上げた盈月の言葉に唖然と加州が盈

月を見れば、呟くように続いた盈月の言葉に……

否、獲物を捕らえたように鋭く光るその双眸に

粟立つ背中に冷や汗が伝うのを感じた……。









.









「あっはは！！はやくはしらないと"鬼"につかまっちゃいますよ？」

『っ……』

振り回される刃に息を切らして逃げ回る。

何処かで落としたのか……ぬいぐるみを持たない

その手と体を今剣の刃と草木で傷つけながら逃

げ回る小さな獲物を、鬼が弄ぶように嗤ってじ

わじわと追い詰めるように追いかけた。

「あっははは！たのしいですねぇ！」

『っぼくは……あんまり…っかな…！』

狂喜に目を光らせながらその背中に刃を振り下

ろすと、刃先は服を切り裂き柔らかい肌に傷を

つける。

薄く跡をつける赤い線に歓喜するように口を歪

めると、傷つけられ躓きそうになりながらも必

死に逃げる姿に目を細めた。

「よくにげますねぇ……。……でも、もう"おわり"にしましょう」

『っ……！』

しかし、それももう飽きたらしい……。

今剣は追いかけるその足を速めると、虧月の前

に踊り出て刀を振り上げる……。

突然に目の前に現れた今剣の姿に虧月が足を止

めようとするものの、勢いに足を縺れさせて地

面にその体を打ち付けた。

「ざんねん……ころんじゃいましたか……」

しかし不幸中の幸いとはこのことか………。

転んだ拍子に空を裂いた刃を残念そうに見下ろ

すと、視線を地面に這いつくばる虧月へと移し

て刀を握り直す。

次は逃がさないと握り直した刀の先に虧月を捕

らえて振り上げた。

「これで"おわり"です……なにもかも……」

先程まで歪んでいたその顔は感情を削ぎ落とし

無表情に虧月を見下ろす。

振り下ろすために掲げた刃に揺れたのはどちら

の瞳か……。

交差する２つの視線に静かに暗闇が降り注ぐ…。

『嗚呼……だから離れたかったのに……』

二人の間で蠢く闇に虧月が目を細めた。

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