【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災十と一 ページ16

「んな我が儘言ってたら、団子全部食っちゃいますよ？」

「幾らなんでもそんな子供騙し……」

分かりやすい程の子供騙しな取り引き……。

いくら幼子の姿と言動をしているとはいえ……ま

さかそんな手に引っ掛かれば苦労しない。

それに加州が思わず吹き出して苦笑した。


『じゃあ言わない！』

「よーしよし、いいこいいこ」

「…て！引っ掛かるの！？」

ぷらぷらと揺れる団子に素直に頷いて団子を受

け取ると、それを頬張る虧月を盈月が頭を撫で

る。

あまりにもあっさりと引っ掛かった虧月に加州

も思わず声を挙げた。


「虧月は基本子供脳なんで」

「…………」

扱いやすいとばかりに虧月の頭を撫でながら加

州へ口を開く。

満足そうに団子を頬張る主と、手慣れたように

団子で餌付けする盈月の姿に加州は唖然と言葉

を無くすと……、やがて肩を落として頭を抱えた。

「まさかここまで子供とは…………」

「団子食べ終わったら花札でもやりますか」

『うん！』

頭を抱える加州を他所に胡座をかいた盈月に座

って、ご機嫌だと言うように足をぷらぷらと動

かして団子を食す虧月。

この５日間、共に過ごす中で確かに子供のよう

な言動をする虧月を見てきた加州だが…………

あまりにも簡単な陽動に引っ掛かった小さな主

を前に、自分達を引っ張っていく主としての今

後に一抹の不安が芽生えたのは明らかだった。


「花札でも良かったの？あんなにかくれんぼしたいって言ってたじゃん」

……しかし、それもまた虧月の個性で純粋な行動は、穢れた欲にまみれてきた自分達にとって良いことなのだろう…。

そう自分に言い聞かせて、団子を食べる虧月と

盈月に習うように加州は腰をおろすと、どこか

呆れたように虧月を見る。


ため息混じりに問われた質問に、虧月はきょと

りと頬張る口を止めると、やがてそれを飲み込

んで、にこりと加州へ笑った。

『んー…、本当はかくれんぼが良かったんだ！』

「……じゃあなんで……」

『だって……今も部屋の周りにたくさん"隠れてる"でしょ？』

「……！！」

あっけらかんと紡がれた虧月の言葉に加州が目

を見開くのと同時に、僅かに聞こえた立ち去る

足音……。

それも天井から床まで、四方八方からのそれに

さぁ…と、血の気が引いていくのが分かる…。


……まったく気づかなかった……。


我が主が、こうして何気ない会話をしている間

に今にも刃を突き立てられようとしていたのだ……。

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