【刀剣乱舞】禍ツ神の本丸

厄災十と四 ページ19

「んじゃ、俺とかみーは飯作って来んで、くれぐれも…くれぐれも部屋から出ねーでくださいよ」

『はーい』

「盈月、それフラグってやつじゃない？」

畳の上に散らばった日記帳と色鉛筆に埋もれる

ように寝転んだ虧月に、時間を見て立ち上がっ

た盈月と加州が見下ろし口を開く。


一応とばかりに釘を差す盈月にぬいぐるみの手

を挙げながら可愛らしく返事をする虧月だが…何

時もの如くフラグに感じて仕方ない……。

それを眺める加州もため息混じりに苦笑を溢した。





『……まぁ、お誘いされたら仕方ないよねぇ』

加州の不安に満ちた視線を浴びながらも二振の

消えた襖にぬいぐるみを弄りながら呟く。

ねぇ〜？とにっこりぬいぐるみに微笑んで首を

傾げる。

そんな虧月の言葉に呼応するように襖越しにく

ぐもった声が聞こえた。



「こ〜んに〜ちはー！いますかー？」

『は〜あ〜い〜』

襖越しにも元気よく呼ぶ声にぬいぐるみを抱き

上げて立ち上がると襖を開く。

「いっしょにあそびませんか？」

開いたその先でにこりと微笑む刀剣に虧月は目

を細めると、同じように微笑み返して大きく頷

いた。

『いいよ、何して遊ぼっか？』

「んー…そうですねぇ……"おにごっこ"なんてどうですか？……だから、"でてきて"いっしょにあそびましょう」

目を弓なりに細めて廊下から手招きをする。

低くなりつつある太陽に照らされて小さな刀剣

の影が虧月を誘うように包み込んだ。

『うん、遊ぼうか』

ぬいぐるみを抱きしめて誘われるままに廊下へ

と足を踏み出す。

『そういえば、何て名前なの？』

「ぼくは"今剣"。よろしくおねがいしますね」

弓なりに細めた目の奥で鈍い光が虧月を見据えた…。









.









「さぁ！こっちににげましょう！」

今剣に手を引かれて庭を走り回る。

只でさえ広い庭は小さな彼等には尚のこと広

く、鬼事をするのにも逃げ隠れする場所は山ほ

どあるのだ…。

逃げ回り走り回れば走り回るほど木々が小さな

彼等を隠した。

『鬼中々来ないね』

それも相まってか……今剣に手を引かれるままに

逃げては来たものの、中々訪れることのない鬼

に木に隠れながら呟く。

つまらないと欠伸を溢してぬいぐるみに顔埋めた。

「"にわ"はひろいですからねぇ……"ひとふり"だけじゃむずかしいのかもしれませんね」

そんな虧月に同意するように今剣が頷いて空を

見上げる。

際から紫に変わりに行く空に目を細めた。

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