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バイクを降りて、ずかずかと店の中へと入っていく。
『いらっしゃいま、』と不自然なところで言葉に詰まった店員さんが俺らをみてピクリと口角を震わせる。

大通りからひとつ路地に入った、落ち着いた雰囲気のケーキ屋さん。ここがマナカちゃんのバイト先。
 
『マナカちゃん、いる?』

『………マナカちゃん?藤宮まなかちゃん?』

『うん。そー』
 
ショーケース越しに、その店員さんは眉を顰めた。照明できらきらしてるクリームの上の苺やキウイとは似合わないくらいの顔。怪訝そうに俺たちを見回して、目を逸らす。
 
『マナカちゃんなら数日間、無断欠勤してますけど』
 
ほんとはこの時間だって、マナカちゃんのシフトなのに。と少しつまらなそうに付け加えて口を閉じた。

マナカちゃんが無断欠勤?あんなに真面目なマナカちゃんが?
思わず後ろにいたケンチンの方を振り返る。ケンチンも少しびっくりしたような顔で、『まじか』と呟いた。
 
『私も、店長も連絡取れなくて困ってるんです。……でもマナカちゃん無断で休んだりするタイプじゃなかったから…』
 
あなたたちのほうが、何か知ってるんじゃないですか?
 
ケーキの甘い匂いと、怪訝そうな目を向ける店員。嫌な予感がして背筋がぞわぞわした。
 
『何か知ってるって?』

『…ずっと変だなって思ってたんです。フツーの学生のマナカちゃんが…あなたたちみたいな人と仲良くしてるの』

『あ?』

『マイキー』

『っひぃ…!だ、だってマナカちゃん家にも帰ってないみたいだし!私達も、よく分かりませんっ!!お、お帰りくださーーい!!』

『家にも帰ってない?』

『…最後にこれだけ言わせて。マナカちゃんは本当に俺たちとは関係ないよ。マナカちゃんを巻き込まない為に側に居るの。兄貴と、約束したから』

『……は、はぁ…?』
 
 ドアを押し開ける。からんからんと音が鳴って、背中の方から弱々しい『ありがとうございました』という声。
 
『なーマイキー』

『ん?』

『マナカと連絡つかなくなって、1週間っつったか』

『ウン』
 
それ以上ケンチンはなんにも言わなくて、顎で後ろに乗るようジェスチャーをして愛機に股がった。

俺のこころのなかのモヤモヤはまだ消えてなかったし、嫌な予感が風を切るスピードと一緒に加速するだけだった。
 
 

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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

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