二十六 ページ28
京に来た際に使っている拠点へと案内してもらった。案内と言っても、前を歩くだけで声を聞いたのは屯所を出た時の「ついて来い」のみ。まぁ、無駄に仲良くしたい訳じゃないから良いのだけど。
天霧 「お待ちしていました」
不知火 「おせぇよ。待ちくたびれちまったぜ」
天霧さんも不知火さんも身長が高いし、鬼独特の雰囲気で圧倒される。それに私に向けられる目線も何となく嫌悪感を感じる。やはり藤波は良い印象は受けないのだろう。でも、それでいい。だからこそ私のやりたいことに協力してくれるのだから。
確認のためにも、昨夜新選組で話した基本的な藤波の情報から話し始めた。ここから話す内容は藤波抹殺のために絶対知っておかなくてはいけないことだ。
私 『不死身のカラクリは簡単です。香雪という妖刀が村の中心に祀られています。それで斬った者の命を吸い取り、生命力を使用者に与える。ただそれだけです』
風間 「ほう?案外つまらぬ仕掛けだな」
そう、厳密に言えば不死身ではないし、先延ばしにしているだけで寿命はある。刀に捧げる生贄がいなければ自然と寿命は尽きるはずだ。刀を壊すと既に天寿を過ぎている者は死ぬ、とか副産物があればいいなとは思うが希望を抱く程度にとどめておこう。
私 『ただ問題は、香雪と対になる天波という刀もあるのですが、それについては何も...』
香雪は姫の家系に代々伝わる刀で、殿に出会った頃、献上したと聞いている。子供たちに姫と殿の人生通りの道を歩かせるやり方なら、おそらく天波を手に入れたのは結婚後のことなのだろう。私はまだ結婚の年齢になっていないから知らされていないというわけだ。機能が分からないのは不安だが、斬られなければ問題ないはず。
私 『かすり傷ひとつでも付けたら最悪死にますから気をつけてくださいね。その点では、きっと不知火さんは優位に立てるはずです』
時代遅れの引きこもりが遠くから知らない武器で攻撃されたら混乱するでしょうね、と毒づくと何故か不知火さんは大笑いしている。彼の何かに刺さったのだろうか...
不知火 「今のボロクソな言い様を聞いちゃあ、疑ねぇよなぁ」
天霧 「藤波の間者ではないかと疑っていました。申し訳ない」
なるほど、疑われていたのか。まぁ藤波が村の外に出ているのもおかしいし、急に抹殺をお願いして挙句に内部情報をペラペラ話しているのだから間者と疑われてもしょうがない。そうだ、それについても話さなくては。
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作者名:柊木 | 作成日時:2023年3月25日 1時