【薄桜鬼】瞳に映すはいつかの思い出 (ページ18)

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あの夜、千鶴と共に新選組にやってきた時と同じ景色が見える。早いものでもう一年以上の時間が過ぎていた。居心地の良さに流され、なんだかんだここにいる。池田屋事件以降私は引きこもりがちだったが、冬の寒さで体調を崩す者が多く、巡察に駆り出されていた。

私『はーっ、寒いですね...』

斎藤「今日は一段と冷えているな」

少しの雪が、京を飾り付けている。日本の風景が私は大好きだ。春の桜も夏の祭りも、秋の紅葉も冬の雪も。穏やかに流れる時間をこうして味わうとはなんと幸せなことなんだろう。
ただ、私は寒いのが本当に苦手なのだ。藤波の集落は比較的暖かかったからなおのこと辛い。

私『首のそれ、あったかそうですね』

斎藤「無いよりマシだが、あんたの方が暖かそうに見える」

私『私？』

指が指す先を見ると、被っている布。確かに現代でいうフードの使い方だから、斎藤さんのマフラーみたいなものより頭全体があったかいかも。

私『雨も雪も多少避けれますし、いいですよこれ。変な目で見られること以外は、ですけどね』

斎藤「...すまない」

私『え？』

斎藤「あまり目立ちたくないのだろう？巡察に付き合わせて申し訳ない」

私『いえ...いいんですよ』

ずっと集落のことで気になっていたことがある。
昔から今まで、集落の場所は変わっていない。大抵のものは自給自足しているが、それでは手に入らないものだってあるはず。
それを手に入れるには...何処かから仕入れる必要がある。つまり藤波の情報を漏らさないと信用ができ、外と行き来のできる協力者がいるかもしれないこと。そしてそいつが私を連れ戻すか殺すかしにくるかもしれないこと。

私はそいつを知らない。けどそいつは私を見ただけでわかるはず。何せあの集落には同じようなやつしかいないのだから...

知らなきゃ対策ができない。いっそのこと、私が目立つことでおびき寄せ、敵を把握した方がいいのではと最近考えている。
こんな中途半端な隠れ方をするより現実的だと思う。ただ、新選組に被害が及ぶ可能性を無視できず、なかなか決断ができないでいた。

斎藤「A」

私『はい？』

斎藤「何か悩みがあるのか？」

私『...』

斎藤「今でなくても良い。俺にできることであれば力になろう」

私『ありがとう、ございます』

できれば言わないままがいい。だけど、いつかは覚悟を決める日が来る予感がした。