十七 ページ17
千鶴 side
会津藩から正式な要請を受け、御所に乗り込もうとしている長州藩を追い返すため出陣することになった。池田屋事件同様、伝令や怪我人の面倒を見るため私もついて行く。山南さん、沖田さん、平助くん、Aさん、その他休養が必要な人たちは屯所にて留守を頼まれた。
会津藩 「そんな沙汰は受けておらんな。悪いが、藩邸に問い合わせてくれるか」
千鶴 「また...！」
向かった先々で新選組は受け入れてもらえず、たらい回しにあった。そしてここでも...
井上 「どうやらここの会津藩は主戦力じゃなくて予備兵らしい」
千鶴 「それでは、新選組も予備兵扱いってことですか？」
井上 「必然的にそうなるね」
酷い...書状には急を要すると書いていたのに、いざ来てみれば暑い中散々歩かされて予備兵だなんて。
斎藤 「状況が動き次第即座に戦場に馳せる。今の俺たちにできることはこれだけだ」
今夜は一晩中気が抜けなさそう...。
夜が明け、焚き火の火も小さくなった頃。遠くから鳴る大砲の音で浅い眠りから覚めた。人の悲鳴と真っ黒い煙で何が起こっているか、想像できた。
土方さんはそれぞれに仕事を振り分け、残った隊士とともに残党兵を追いかけるため天王山へと向かった。その先で...
風間 「その羽織は新選組だな」
千鶴 「…あ、その人！あの夜池田屋にいました！」
風間 「あの夜も池田屋に乗り込んできたかと思えば、今日もまた手柄探しとは…」
あの日、沖田さんと斬り合いをしていた男が天王山への道を塞ぐように立っていた。新選組に対する侮辱の言葉を並べ、時間稼ぎをしているようだ。永倉さんに仕事を任せ、土方さんは男の足止めを試みた。
風間 「そういえば、穢れた血はこの場にいないようだな」
土方 「穢れた血…？なんのことだ」
風間 「何、お前たちには関係のないことだ。どうせあれは死ぬのだからな」
土方 「訳のわからねぇことを…！」
千鶴 「危ない！...っう」
土方さんの攻撃により男の手から弾かれた刀が私の腕を掠め、橋へと刺さった。
天霧 「風間、そこまでです」
風間 「ふん。まさかとは思ったが、やはりこの女…」
なんだろう、この人。何だか...
御所に討ち入った長州の過激派浪士は戦死したが、逃げ延びた者が京の都に火を放ち、町は甚大な被害を被った。
この後、長州藩は朝廷に逆らう逆賊として扱われていく。この事件は後に禁門の変と呼ばれることとなった。
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作者名：柊木 | 作成日時：2023年3月25日 1時
