シヴァ神３０→緑谷 ページ32
僕の前に優雅に立ち、微笑む彼は。いつもの彼とは全く違った。
それが当然であるかのように戦いを傍観し、時折「がんばれー」と声援を送る。誰が傷付こうと基本的には無視だ。
例外は彼の兄、死柄木弔のみ。あの人が攻撃を受けると毎回反応を示す。
「ねえ、紫亜ちゃん」
「なァに、梅雨ちゃん」
「貴方はヴィランなのかしら？」
「ヒーローの卵だよ。お、兄さんさっすがァ！」
あす、つ、っゆちゃんの言葉にも当たり前のように答える。……女の子をさらっと下の名前で呼べるのは凄いけど。
僕は紫亜君のコスチュームの袖を軽く引いた。赤い天鵞絨のようなそれがはらりと揺れる。こちらに振り向き直した彼の胸元に、蝶々結びされた金の紐と赤いブローチが輝いた。
奥に蕩けるような深い紅色が僕の視界を埋める。
そういえば、紫亜君のコスチュームには赤色と金色がふんだんに使われている。とても、とても綺麗だ。彼の淡い水色の髪に、ラメを入れてるわけでもないのに輝く金色、そして目を惹き付けて止まない赤色。
妙な色合いのはずなのに、どういうわけかよく似合っている。
チカチカと、彼の全てが瞬いた。
「どうしたんだい？」
「え、と……紫亜君は、お兄さんが傷付くの、いや？」
「そりゃあね。兄さんは僕を守ってくれたんだ、身を挺して。愛してくれたんだ、全身で。だから僕も兄さんを守りたいし、愛したい……いや愛してる」
その目は、真剣だった。
慈しむような視線を向け、愛しげな微笑を浮かべた彼。僕は思わずそれに見とれた。
どこかの国の王子様が、愛するお姫様を思っているような……。対象は兄だが、言葉にするとこんな感じだろう。
「かつて僕らは孤独だった。互いのみが世界の全てだった。それ以外はあらゆるものを排斥しなければならなかった。だからこそ、兄弟という繋がりに唯一無二の価値があるんだ。それは今も昔も変わらない」
それは僕に言ったのか、梅雨ちゃんや峰田君に言ったのか、それとも他の誰かに言ったのか。彼の過去が重いものであるということ以外、分からなかった。
「僕はただ、…………だけだよ」
きみはその言葉に、何を乗せたの？
教えてくれよ、きみの見ているものを。僕たちは個性を手に入れた。けれど、人の心を正確に読む力なんて持っていないんだ。ここにいる誰も。
……紫亜君。僕はきみを助けたいんだ。
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グレイス - なんものさん» ありがとうございます！そう言ってくださると本当に嬉しいです！これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします！ (2018年4月14日 21時) (
レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
なんもの - しょきからよんでたけどここまでのびてまじ嬉しい (2018年4月12日 21時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
グレイス - ルッカさん» ご指摘ありがとうございます。そうでした！すいません、訂正しますね！ (2018年1月20日 19時) (レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
ルッカ - 11話で夢主くんのセリフに『ほんと、問題児が多いこっで』ってあるんですが、多いことで ではないでしょうか？間違ってたらゴメンナサイ。 (2018年1月18日 18時) (レス) id: e083ca4c6c (このIDを非表示/違反報告)
グレイス - プロ(笑)さん» ご指摘ありがとうございます。言われてみれば確かに変でした(笑)また何かあれば指摘お願いします！ (2018年1月16日 18時) (レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2017年9月30日 16時
