シヴァ神２８→No side ページ30
場が総毛立つような重苦しい気を纏った紫亜は、数度その瞳を瞬かせる。まるで寝起きの人間が視界に慣れようとするかのように。
「ん、んん……？んん……んー……ん」
しばらく謎の唸り声を発し、首を鳴らす。そしてあの空虚な笑みで納得の表情を浮かべると、いつもはパチリと開いている目を半分ほど閉じた。それにより紫亜の雰囲気は一気に気だるげな様相を帯びる。
体から余計な強張りを抜き、無の笑顔のままそこに立つ。ただこれだけのことで空気さえ凍ったように動かなかった。神の圧というものの威力だろうか。
「人間はとても愚かだよ。でも、たまにいるのだ。『これ』が」
誰に聞かせるわけでもなく、独白調に呟かれた言葉。その言葉の意味を汲み取るのは、彼の担任たる相澤と彼の兄たる死柄木には容易だった。
つまり。今の彼は紫亜Aではないということ。
つまり。紫亜Aは見初められたということ。
つまり。これまでのそれらは個性ではないということ。
異形型の個性の中には、常闇のダークシャドウのようにある程度の自我や人間性、知性と呼べるものがあるものも存在する。しかしこの場合、それとは明確に違った。
ある程度という中途なレベルではない。少々の特殊性を持つ個性事象的な人格を遥かに超えた、それこそ本物の人間なのである。いや、どちらかと言えば神と呼んだ方がいいだろう。
ともかく。
現在の紫亜は、一種の憑依状態にあるといってもおかしくない。明らかな別神格にはこれしか言い様がないのである。
「……さて。ここで暴れるのは無理があるな。折角出て来て何だが、すぐ引っ込むことになりそうだ。まあこれはこの者がバランスを崩したせいであって私に非はないのだから気に病む必要はないか。おお、そろそろ落ち着いてきたことだし、戻っても良いかもしれんな」
始めは困ったように眉をひそめ、やがて首を縦に振り、再び数度目を瞬く。
その瞬間、あの圧倒的な重圧は綺麗さっぱり霧散する。これはつまり、憑依状態にあった神……シヴァ神が離れたということだ。
「お前、紫亜の兄なんだってな」
「そうだよ」
「アレは何だ？」
「……シヴァ神じゃない」
「……そうだな」
束の間、敵同士であるのを忘れた２人が言葉を交わす。
「兄さん？先生？……何してんの？」
シヴァ神２９→No side→←シヴァ神２７→No side
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 262人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
グレイス - なんものさん» ありがとうございます！そう言ってくださると本当に嬉しいです！これからも頑張っていくので応援よろしくお願いします！ (2018年4月14日 21時) (
レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
なんもの - しょきからよんでたけどここまでのびてまじ嬉しい (2018年4月12日 21時) (レス) id: 54f25622c3 (このIDを非表示/違反報告)
グレイス - ルッカさん» ご指摘ありがとうございます。そうでした！すいません、訂正しますね！ (2018年1月20日 19時) (レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
ルッカ - 11話で夢主くんのセリフに『ほんと、問題児が多いこっで』ってあるんですが、多いことで ではないでしょうか？間違ってたらゴメンナサイ。 (2018年1月18日 18時) (レス) id: e083ca4c6c (このIDを非表示/違反報告)
グレイス - プロ(笑)さん» ご指摘ありがとうございます。言われてみれば確かに変でした(笑)また何かあれば指摘お願いします！ (2018年1月16日 18時) (レス) id: 3227562616 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2017年9月30日 16時
