【私的】あばれ大蛇とエンマさま (ページ12)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:5,667 hit

もう一つの出会いページ12

じいちゃんのいけず。暴れ大蛇と遊んで来いだなんて。
可愛い孫がどうなってもいいのかよ。
暴れ大蛇か………一体どんな怖い顔をしてるんだろう。
獲物を丸呑みするような耳まで裂けた口に、睨まれたら足が竦む程吊り上がった切れ長の目。
チロチロ出る舌と鋼みたいな鱗…………。
想像すればするほど、嫌悪感に鳥肌が立った。
其奴は彼処の木の幹に腰掛けているという。
「誰だ。」
不意に掛けられた声に仰天したが、想像より遥かに高い声に一瞬女中の声かと疑った。
しかし此方に向けられた眼差しは明らかに暴れ大蛇のものだ。
其の姿を捉えた時、やはり再び女人ではないかと云う疑問が頭を駆け巡った。
切れ長の吊り目ではあるが、琥珀のように透き通った瞳には蛇のような鋭さはなく、マフラーに隠れてはいるが、口は獲物を丸呑み出来る大きさとは到底思えない。
花に喩えるならカトレアだろうか。
声に敵意と警戒心の色がみえるが襲い掛かって来る様子は微塵もなく、数度瞬きをしながら此方にじいっと視線を送っていた。
「俺は未来の王様だ。」
胸を張ってしたり顔で言ってやった。
すると暴れ大蛇はふふっと吹き出した。
俺は本気で言ったんだけどな。
「そうか。ガキ、これから宜しく頼む。」
「ガキって言うなよ！」
まだ笑いの余韻が残っている暴れ大蛇の表情は、今迄の大蛇の印象を覆す程に穏やかで優しかった。