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『ロボロ?なに持ってるの?』
「おん、来たで。みんなも後から来るって」
太陽が燦々と輝く午後、ロボロが何かを持ってきた。それは見たことの無い道具。
「よそから来たやつにな、字を教えて貰ったんよ。やからAにも教えようと思って」
『字を?書けるの?』
「なに言うてんの、もう12歳やで?」
うちの村はあまり外と交流せずにいたから、字が読めても書けない人の方が多かった。書けなくても不自由なことなんてなかったから。でも書けるようになったんだ、すごいな。
ロボロは紙と筆を出して何かを書いてくれる。
「これで、ロボロって読むねんて。で、Aはこう書くねん」
『へぇ、習ったの?』
「さっきな、みんなの名前も教わったで」
『すごい、書いて書いて!』
ぎこちなく動く筆は、ガタガタだけれどもゆっくりと紙を黒く染めていく。新しい事は何であっても楽しい、私も書けるようになりたい!食い入るように見ていると、他のみんなも道具を抱えて山を登ってきた。
「あ、もうやっとるやん!俺も書くわ!」
「チッスチッスチッス〜!」
『シャオロンとゾムも書けるの?』
「当たり前やんなめんなよ?」
「えっと〜、あ!ロボロもうみんなの名前書いとるやん!」
「こういうのは、早いもん勝ちや!ほら、書けたでA!」
『わあ、ロボロすごいね!』
徐々に集まったみんなは持ってきた紙に色々な文字を書き出す。日が傾いてきた頃、白かった紙はもうどこにも書けないくらい黒く染まっていた。
「あかん、もう書けへん」
「紙は高級品やからな、家にも無いのが辛いな」
「グルッペンの家にも無いん?」
「一応あるが……勝手に持ち出せばめっちゃ怒られるやろうな」
『……じゃあ、あそこに書けば?』
指差したのは社の壁。あそこに書いてくれればみんながいない時でも見られる。
「……ええんかな」
「それ俺も思った」
「ま、神様がええって言うんやからええやろ!俺いっちばーん!」
「あ、ズルいぞコネシマ!僕が一番や〜!」
「お前ら、目立たんように書けよ!」
コネシマと鬱が一番に走り出し、続いてみんなが社の中に入る。一番最後に入ったエーミールはまだ遠慮しているようだった。
「ホンマにええんですか?こんな神聖な場所に」
『うん。書いてくれると、私が一人の時でも寂しくないかなって思って』
「寂しい?」
『エーミールも書こう?』
「え、ええ」
。
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ベルギーチョコ(プロフ) - ティッシュ一箱使い切るまで泣いてました。今までで一番泣いたと思います。本当に素晴らしい作品をありがとうございました (2021年12月13日 4時) (レス) @page30 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で一番綺麗な世界観と文章でした。もっと早く出会いたかった…こんなに素敵な作品をありがとうございます。 (2021年6月17日 19時) (レス) id: 325d54ee5c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - bloomさん» はじめまして、最後まで読んでいただけて嬉しいです。そう言っていただけて、同じ文字書きとしてとても嬉しいです、こちらこそコメントありがとうございました! (2021年3月26日 5時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
bloom(プロフ) - 素敵な作品に出会えました。この作品に感化されて私も話を書いてみようと思えました。ありがとうございます! (2021年3月26日 0時) (レス) id: 8bbe5d5c73 (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - あるかさん» コメントありがとうございます!確かに少なめですね、見つけていただいてありがとうございます。後書きまで読んでいただけたのでしょうか、感謝です。幸せなラストだと仰っていただけて嬉しいです、これからも頑張ります! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2020年2月2日 8時