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57* ページ13

セミの声が社の周りから聞こえる夏。今年はみんなが17、18歳になり、仕事が忙しくも余裕が出来てきた面々が足を運んでくれるようになった。

私とロボロの関係はいつの間にか仲間に伝わっており、茶化されるもそこまで変わらず接してくれる。
……いや、変わった人もいる、かな。


「もうこんな時間や、また明日来ますねAさん。グルさんは?」
「俺はもう少しここにいる」
「わかりました、名残惜しいですがこれで。また明日!」
『また明日ね、エーミール!』


爽やかな笑顔を残して、少し萎れた野菜を持ち山を降りていくエーミール。


「あいつも、悪気はないんだが」
『私は毎日来てもらっても大丈夫だけど、エーミールの家の仕事は大丈夫?』
「家の人は不思議に思ってはいるが、仕事に関しては大丈夫そうだ」


エーミールはここのところ毎日、お供え物を持って来てくれている。

毎日来てくれる人なんて今までいなかった。ロボロだって仕事が忙しい日は来ないし、それが当たり前だと思う。だから、なんだか心配になってしまう。


「自分でも無自覚だろうが、きっと嫉妬しているんだろうな」
『気持ちに気付いてないわけじゃないんだけど……私に出来る事って、なんだろう』
「今まで通りに接することだろ」
『……うん』


エーミールが私に向ける感情。それが友情だけではないと気付いたのはだいぶ前。ロボロとはまた違う視線に気づかないわけがない。
名前を呼ばれ、私を見つめるその色素の薄い瞳は熱を帯びていた。毎日箱いっぱいの農作物を運ぶ足は羽が生えているかのように跳ねた。

その気持ちは、痛いほどわかる。でもその事に気付いた時には、私はロボロが好きだった。

何も言ってこないエーミールに甘えて、私はいつも通りに接することしかできない。


「神様も大変そうだな」
『でも、グルッペンも大変でしょ?まさか村長の息子だったなんて思わなかった』
「Aとは身分関係なく付き合いたかったからな」

「お、グルッペンがおるなんて珍しいな」
「おうロボロ、お前の彼女と密会中やぞ邪魔すんなや」
「密会すんなや全力で邪魔させてもらうわ」
『村長の息子と密会してました』
「だから密会すんな」


トタトタと走ってきて、私とグルッペンの間に無理やり座ったロボロ。
グルッペンは近いわ、と離れて座ってしまったけど、私はロボロが嫉妬してくれたのかなと嬉しくなる。


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ベルギーチョコ(プロフ) - ティッシュ一箱使い切るまで泣いてました。今までで一番泣いたと思います。本当に素晴らしい作品をありがとうございました (2021年12月13日 4時) (レス) @page30 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で一番綺麗な世界観と文章でした。もっと早く出会いたかった…こんなに素敵な作品をありがとうございます。 (2021年6月17日 19時) (レス) id: 325d54ee5c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - bloomさん» はじめまして、最後まで読んでいただけて嬉しいです。そう言っていただけて、同じ文字書きとしてとても嬉しいです、こちらこそコメントありがとうございました! (2021年3月26日 5時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
bloom(プロフ) - 素敵な作品に出会えました。この作品に感化されて私も話を書いてみようと思えました。ありがとうございます! (2021年3月26日 0時) (レス) id: 8bbe5d5c73 (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - あるかさん» コメントありがとうございます!確かに少なめですね、見つけていただいてありがとうございます。後書きまで読んでいただけたのでしょうか、感謝です。幸せなラストだと仰っていただけて嬉しいです、これからも頑張ります! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2020年2月2日 8時

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