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はっと、新鮮な空気と賑やかな声に意識が覚醒する。私は、なんなんだ?

足の下には人がたくさんいて、なにやら建物を前に宴をしている。豪華な食事、酒。よく見れば、見覚えのある顔……に似てる?


「やっと出来たな〜!」
「何年かかったんだか」
「親父に見せたかったぜ」


そこには、私を生け贄に出した村の人たちに似ている人が集まっていた。面影はあるけど、ずいぶん年をとったな。


「じゃあもういっぺん、乾杯すんぞ!」
「っしゃあ〜!」
「村を救ったAを奉る社がようやっと出来た!忌々しい蛇を倒した英雄として、これからは感謝していこう!」
「そうね、ありがとねAちゃん」
「ありがとうA!」
「ありがとう、乾杯!」


大人たちは楽しそうに酒盛りをして、みんなでワイワイ話している。
私、村を守れたんだ。嬉しい、素直に嬉しい。みんなが私を忘れてないのも嬉しい。

は、と視点の違和感に気付き、そこで初めて自分が宙に浮いている事に気がついた。
ゆっくり村人に近づく。けれど、私に気付く人は一人もいない。

そうだよね、私死んだんだもん。みんなが見てくれなくても、笑っている顔が見られただけで嬉しいよ。


「でもどうするの?あの……目玉。捨てても捨てても戻ってくるわよ」
「気味悪いよな、まるでAに執着してるみたいでよ」
「頑丈な箱に入れてしまっておこう。子供たちに見られないように」


村人の視線の先には赤黒い玉が転がっていた。それはよく見た大蛇の瞳と同じ色で。忘れるな、離れないぞと悲しく光っていた。

あなたは、人間を愛した事があるのね。そして愛した人の代わりに、生け贄として人間を欲した。その重い愛も、私が背負ってあげよう。一緒にこの村を守ろうね、桐の箱にしまわれた瞳に語りかけた。


「……それは一体なんだ?」
「こら、来るなと言っただろう!」
「だが退屈で……」
「グルッペンちゃん、みんなと遊んでてちょうだい」
「……そう、そうっすねおばさん」


ひとり、子供が来たが村の人に追い返されていた。私の知らない子、綺麗な金髪。どんな子なんだろう、他にも子供がいるのかな……また来て欲しいな。

日が沈んできて、大人たちが一人、また一人と帰っていく。帰る前に社の前で手を合わせ、自分たちの幸せを願っていく。幸せになって欲しい、してあげたい……これじゃまるで、私が神様みたい。

そう思いながら、日が沈むのと同時に私の目蓋も閉じて、意識がふわりと沈んでいった。



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ベルギーチョコ(プロフ) - ティッシュ一箱使い切るまで泣いてました。今までで一番泣いたと思います。本当に素晴らしい作品をありがとうございました (2021年12月13日 4時) (レス) @page30 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で一番綺麗な世界観と文章でした。もっと早く出会いたかった…こんなに素敵な作品をありがとうございます。 (2021年6月17日 19時) (レス) id: 325d54ee5c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - bloomさん» はじめまして、最後まで読んでいただけて嬉しいです。そう言っていただけて、同じ文字書きとしてとても嬉しいです、こちらこそコメントありがとうございました! (2021年3月26日 5時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
bloom(プロフ) - 素敵な作品に出会えました。この作品に感化されて私も話を書いてみようと思えました。ありがとうございます! (2021年3月26日 0時) (レス) id: 8bbe5d5c73 (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - あるかさん» コメントありがとうございます!確かに少なめですね、見つけていただいてありがとうございます。後書きまで読んでいただけたのでしょうか、感謝です。幸せなラストだと仰っていただけて嬉しいです、これからも頑張ります! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2020年2月2日 8時

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