1.はじまり ページ1
春風に煽られながら、桜の舞う校門前に立つ。
ここは宮城県立烏野高等学校。
私の新しい日常の舞台だ。
ここでは予想だにしない出会いが起こることを、私はまだ知らない。
────…
「いよいよ、華の高校生…!!」
なんと素晴らしい日だろう。
私はつい先日、晴れて高校生となったのだ。
桜が舞う中で見える美しい校舎。
新たな制服を見に纏ってくる高校は、受験時に来た時よりも圧倒的に何かが違う。
慣れない校舎の匂い。
見知らぬ新たなクラスメイト達。
新しい先生。
どれもこれも、新鮮でとても心が躍った。
入学式以来の教室。
ザワザワと各々話しているクラスメイトを横目に、私は深く深呼吸をする。
「んーーー!新しい気持ちになるね!」
「Aだけだよ、そんな馬鹿みたいにはしゃいでるの」
両手を広げて全身で高校を感じている私を見て、呆れた様子の
中学が同じだった友人だ。
進学先が同じだっただけなく、クラスまで一緒だということを知った昨日はお祭り騒ぎだった。
何故なら、彼女がいなければ私はぼっち確定だったからだ。
「えーーへへへへ、だって、あの烏野だよ?カラスって名前のカッコいい高校だよ?」
「気色悪い笑い方やめて。てか、まさかこの高校に進学した理由ってそれ?」
嘘でしょ、と言わんばかりに引いた表情で言ってくる桃華。
いや、違うけれども。
「あっは」
「否定しろや」
「冗談冗談。普通に行きやすそうな高校だっただけだよ。まぁ、カラスって名前がかっこいいって思ってるのはホント」
真顔で言われたので本当のことを伝えると、呆れた様子で深いため息をつかれる。
彼女は中々にドライな性格だが、なんだかんだ構ってくれる良き友なのだ。
そんな彼女からこんな言葉を聞いた
「そういえば、今日の自己紹介の時、『日向翔陽』っていなかった?」
「翔陽…?まじ…?」
「あんた友達でしょ…なんで気付かないわけ」
自己紹介の時、実は自分の番が終わった後すぐに眠ってしまったのだ。
今日が楽しみすぎて夜に来ることが無かった睡魔が、今頃になって私の元にのそのそとやってきたので、爆睡していました…なんて言えるわけがなかった。
「そっか、翔陽も一緒だったんだ…後で挨拶しようかな」
「そうしな」
翔陽は小学から一緒で、所謂幼馴染の関係だ。
この後は軽いオリエンテーションが始まるため、どこかのタイミングで見かけたら声をかけようと思いつつ席についた。
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作者名:カルファ | 作成日時:2022年11月10日 18時